2012 Fiscal Year Research-status Report
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24720069
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
正木 喜勝 大阪大学, 文学研究科, 招へい研究員 (80456938)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 近代演劇 |
Research Abstract |
本研究課題は大正期の関西(主として京阪神)における新劇運動の実態を、その「上演」および「東京との比較」という側面に注目しながら調査研究することである。申請書に記述したとおり、(1)関西における第一次新劇運動と文芸協会 (2)宝塚と築地小劇場 (3)関西野外劇と坪内逍遥のページェント理論、の三つを主たるテーマにしているが、本年度において、これらに関する一次資料をおおむね予定通り収集することができた。具体的には、(1)について、文芸協会の関西公演『人形の家』『ヴェニスの商人』『思い出』、関西劇芸術研究会『僧房夢』、関西新劇協会『人民の敵』に関する新聞・雑誌記事(紹介記事や劇評)、(2)について、築地小劇場宝塚公演の劇評、パンフレット類、(3)について、野外劇『織田信長』、関西学院劇研究会『地蔵経由来』についての劇評、回想録等である。 また、関西で発行された文芸雑誌『西日本文芸』『演劇雑輯』『現代演劇』のほか、さまざまな群小文芸雑誌において、これまで未確認だった関西新劇史に関する二次資料を見つけることもできた。関西新劇史については先行研究、参考文献自体が少なく、これらの二次資料は次年度の調査研究にも役立つといえる。加えて「関西性」を明らかにするための比較対象として、他地域(名古屋圏)の新劇運動も調査した。 本年度の調査の過程で、宝塚という場所が関西における第一次新劇運動にある程度の関わりを持っていたらしいことがわかってきた。つまり、研究開始当初は(1)と(2)を独立したものとして扱っていたが、両者に直接的な関係があるらしいことがわかってきた。宝塚と新劇と言えば、築地小劇場以降に誕生した宝塚国民座を想起させるが、それ以前から影響関係があったとすれば、これは次年度において十分調査すべき課題だといえる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上の「研究の成果」欄でも記したとおり、一次資料の収集はおおむね計画通りに達成することができた。また、関西新劇史に関する二次資料、他地域の新劇運動に関する史料も新たに確認することができた。ただ日本演劇学会分科会近現代演劇研究会での口頭発表を予定していたが、これについてはまだ研究発表の段階に至らず実施できなかったので、次年度に行うつもりである。
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Strategy for Future Research Activity |
収集した一次資料に基づき、「研究成果」欄で挙げた上演の再構築を行う。また、関西新劇史に関する二次資料をまとめ、大岡欽治『関西新劇史』との照合を行う。当初の予定どおり東京との影響関係と、「関西性」というべきものの存在の有無を念頭に置くが、それとは別に、「研究成果」欄でも触れたとおり、関西における第一次新劇運動に果たした宝塚の役割についても考察を進めていく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用額が4,081円あるが、これは想定よりも旅費が多くなったこと、それにともなって人件費を用いなかったこと、これらの調整の結果生まれたものである。次年度における使途については、次年度に請求する研究費と合わせて複写代に充てる予定である。複写の予算が増えれば、外部の図書館等での調査がより円滑に進むはずである。
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