2012 Fiscal Year Research-status Report
山東京伝の江戸文化圏解明に関する研究ー松前文京の文芸活動について
Project/Area Number |
24720087
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
鹿島 美里 北海道大学, 文学研究科, 専門研究員 (00609068)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 山東京伝 / 松前文京 / 江戸座俳諧 / 泰郷 / 吉原 / 近世 |
Research Abstract |
山東京伝の作品を読解する鍵となる江戸文化圏を明らかにするため、京伝の有力なパトロンの一人であった松前藩主松前道広の弟、松前文京の俳諧活動および吉原における文芸活動について調査・分析することとした。これは吉原文化の一つが大名子弟を後援者とする江戸座俳諧であることから、江戸後期文化を生み出す原動力となった江戸座俳諧交友を調査することが江戸文化を解明する重要な基盤になると考えたからである。 今年度は、研究計画に基づき、松前文京(俳号泰郷)に関する俳諧資料を調査・収集し、データベースの作成を行った。天理図書館、綿屋文庫、柿衛文庫、西尾市岩瀬文庫、国文学研究資料館等で原資料、マイクロフィッシュにあたり調査・分析を行った。調査は約100点からデータを採録し、俳書の入集者、俳書の内容、序跋の執筆者等を項目とした。 大名子弟をパトロンとする江戸座俳諧との関連を調べるため、江戸座俳諧宗匠の存義との係わりを中心に、楼川・鶏口・秀国・菊堂・泰里等の俳書について、入集者、俳書の内容を分析した。この調査から、江戸座俳諧宗匠存義が関係した俳書に文京と弟武広(俳号李井)が入集していた。そこから、二人の俳諧の師匠が存義であることが判明し、文京兄弟の存義との深い俳諧交友が見えてきた。 さらに、文京は京伝のもう一人のパトロンであった松江藩主松平治郷弟、松平雪川とともに俳書に入集し、弟武広は大名俳諧を嗜む大和郡山藩主柳沢信鴻(俳号米翁)との係わりが見られた。文京と文京弟武広、雪川、米翁という大名子弟が存義側宗匠を交えた俳諧交友を行っていたことが判明してきた。 これらの調査から、江戸座俳諧宗匠存義と松前文京の兄弟や江戸戯作界の人々との江戸座俳諧における係わりが明らかになり、このデータに基づき、松前文京に係わる俳諧活動について引き続き解明してゆく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、松前文京が関係する俳書について、江戸座俳諧宗匠存義を中心に、楼川・鶏口・秀国・菊堂・泰里等の俳書を天理図書館綿屋文庫、柿衛文庫、西尾市岩瀬文庫、国文学研究資料館等でマイクロフィッシュ、原資料にあたり資料調査を行った。その資料約100点をもとに、書名、刊年、編者、序跋の執筆者、所蔵先、書誌の形態、俳書の内容、俳書の入集者のデータベース化を順調に進めた。江戸座の俳書では、存義を中心とする係わりを中心に分析し、文京とその兄弟の存義との深い関わりが明らかとなった。さらに同時代の大名子弟松江藩主松平治郷弟、松平雪川、松代藩主真田幸弘や大和郡山藩主柳沢信鴻などと文京の江戸座俳諧における関連も調査し、その俳諧交友が見えてきた。このデータベース化によって、存義を中心とした江戸座俳諧宗匠と松前文京ら大名子弟の俳諧交友関係がより明確なデータであらわれ、今年度の研究目的をおおむね達成できたといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度の調査・資料収集・データベース化によって明らかになった松前文京の江戸座俳諧活動についてまとめる。松前文京の俳諧交友関係を江戸座存義側との係わりを中心にて考察してゆく。これにより、文京の俳諧交友を通じて生成された江戸文化圏の解明を進展させる。これを論文としてまとめ、成果の発表を行う。 そして、今後は山東京伝作品内に描かれた松前文京について、吉原文化との係わりを中心に解明してゆく。松前文京の吉原文化との繋がりのうち、松前文京が身請けをした吉原松葉屋遊女七代目瀬川との係わりを、多くの文献資料から調する。松葉屋七代目瀬川は山東京伝作品に多数登場し、天明の吉原を代表する存在であったため、吉原文化解明には欠かせない人物である。山東京伝作品や吉原の案内書である吉原細見、また吉原遊女瀬川が登場する黄表紙・洒落本、さらに同時代の作家、大田南畝の『松楼私語』や『俗耳鼓吹』など、遊女瀬川が登場する文献から調査し、松前文京との係わりを解明し、これを論文としてまとめ、発表する。これによって吉原文化と文京の繋がりをまとめ、松前文京の文芸活動の研究を完了させる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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