2014 Fiscal Year Research-status Report
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24720102
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Research Institution | Prefectural University of Kumamoto |
Principal Investigator |
木村 洋 熊本県立大学, 文学部, 准教授 (70613173)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 徳富蘇峰 / 坪内逍遥 / 末広鉄腸 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度に1880年代後半から1890年代前半の徳富蘇峰の言論活動を調査した。具体的には、『将来之日本』『新日本之青年』などの著作、『国民之友』『国民新聞』に載った感想録や文学評論や人物評論を確認した。さらに、蘇峰がどのように受容されたかを確認するために、『文学界』『評論』『日本評論』『六合雑誌』『東京経済雑誌』『早稲田文学』『読売新聞』などを調査した。その他、蘇峰の文学観と対立した政治小説の動向を明らかにするために、末広鉄腸『雪中梅』『花間鶯』などの小説を検討した。上記の作業と並行して、蘇峰の文学振興策の意義を探るために、同じ時期の坪内逍遥の文学活動を検討した。 以上の調査によって文学史上の蘇峰の業績がいっそう鮮明な形で見えてきた。従来蘇峰は、北村透谷と比較する形で、文学に理解がない人物(功利主義者)として消極的に評価されてきた。しかし蘇峰は、政治小説の流行が話題となる一八八〇年代後半の展開の中で、この状況に対抗する形で感想録や文学評論を『国民之友』に発表し、さらに同誌で文学を厚遇した。蘇峰が「美文学の庇護者」として称えられたのはそのためだった。こうした活動と結びついていたのが、演説場や国会といった政治的空間とは異なるところで、つまり宗教や文学の言葉を起点にしてもたらされる政治的な貢献を考慮しつつ社会改良の契機を探ろうとする問題意識だった。以上の検討から、蘇峰が文学の地位を向上させようとする熱意において際立った人物だったことが明らかになった。こうした蘇峰の立場は、政治と切り離す形で文学のあり方を規定していこうとした坪内逍遥の立場とは異なっており、そこに透谷や国木田独歩が蘇峰に惹かれた要因があったと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「研究実施計画」で予定していた作業をおおむね進めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も引き続き明治中期の文学界、言論界の動向を調査することを予定している。
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Causes of Carryover |
残額がゼロにするように物品を購入したが、経理上の都合で、別の予算からの支払いとなったため、上記の残額が発生した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
前年度残額分を研究上必要な図書の購入などに充てることにしたい。
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Research Products
(1 results)