『先代旧事本紀』の文献学的研究

2012 Fiscal Year Research-status Report

• Project/Area Number: 24720106
• Research Category: Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
• Research Institution: Nishogakusha University
• Principal Investigator: 松本 弘毅 二松學舍大學, 文学部, その他 (30434244)
• Project Period (FY): 2012-04-01 – 2015-03-31
• Keywords: 先代旧事本紀 / 先代旧事本紀（卜部兼右本） / 先代旧事本紀（石川忠総本）

Research Abstract

『先代旧事本紀』（十巻）の卜部兼右本の研究を進めた。所蔵する天理図書館に赴き、閲覧及び複製の依頼をし、自宅での研究を進めることとした。卜部兼右本は鎌田純一『先代旧事本紀の研究』でも重要な写本と位置づけられている通り、『先代旧事本紀』諸本の研究上、欠かせない一本である。鎌田氏は『先代旧事本紀』の詳細な校本を作成しているが、今回卜部兼右本を実見して、鎌田氏校本での兼右本への言及にはやや粗い点があることが諸々わかった。そのため、一から兼右本をテキストデータとして入力して検討し直す必要があると判断したため、本年度は兼右本のデータ入力を進め、本文の入力を巻五まで終わらせた。これに加えて傍訓や書き込みなども入力し、次年度中に翻刻として公にする予定である（ただし大部であり、かつ入力すべきことが多いため、途中までの公表となる可能性もある）。
また兼右本のみ見ていてはその特徴に気づきにくいことも考えられるため、本年度中に石川忠総本の調査も開始した。石川忠総本は神宮文庫所蔵であるが、貴重本のため複写不可能につき、実地での調査を行った。現在巻七の途中まで調査を終えているが、次年度にも引き続き調査を進める予定である。
石川忠総本については、同時にテキストデータの入力も進めている。また、上記卜部兼右本、及び卜部兼永本（天理図書館善本叢書所収。『先代旧事本紀』諸本の中で最重要とされている本）との比較検討も進めているところである。現在巻四まで終えているが、鎌田氏とは違い、巻ごとの系統を考えなければいけないと感じている。この作業は、将来的には新しい『先代旧事本紀』校本を作成するための下準備である。

Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

当初、初年度は卜部兼右本『先代旧事本紀』の研究と、兼右本及び『類聚神祇本源』等との比較検討をする予定であったが、兼右本自体の研究を進めるべきと判断したため、兼右本の分析を主に行った。また、それと関わって石川忠総本『先代旧事本紀』の本文の分析に、研究内容を切り替えた。兼右本・石川忠総本ともに、順調に調査は進展している。よって当初の予定を変更はしたものの、研究自体は進んでいるものと考える。

Strategy for Future Research Activity

初年度に引き続き、卜部兼右本と石川忠総本の研究・分析を進める。兼右本については、翻刻を公にする予定である。石川忠総本の調査については、また神宮文庫での実地調査を行い、全巻の調査終了を目標とする。卜部兼永本との比較調査も引き続き行い、巻ごとの傾向や特徴を捉えられるようにする。
また、兼右本・石川忠総本の調査を進める中で、見られる限りの諸本は調査した方がよいと考えた。そこで本年度は、上記の調査・研究と並行して、その他写本の調査も進めるつもりである。

Expenditure Plans for the Next FY Research Funding

該当なし