2013 Fiscal Year Research-status Report
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24720106
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Research Institution | Nishogakusha University |
Principal Investigator |
松本 弘毅 二松學舍大學, 文学部, 非常勤講師 (30434244)
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Keywords | 先代旧事本紀 / 卜部兼右本 / 石川忠総本 / 徳大寺家本 |
Research Abstract |
『先代旧事本紀』の諸写本の調査・研究を進めた。 まず卜部兼右本(天理大学図書館)については、序・巻一・二(第一冊)について、翻刻を公にした。これまで所蔵先で調査しなければ実見が叶わなかった卜部兼右本であるが、諸写本の系統や『先代旧事本紀』の本文校訂の際には必ず検討しなければならない写本である。これを公にすることにより、『先代旧事本紀』の基礎的研究が進むものと確信する。 また、その他の諸写本についても複写依頼などをし、研究を進めた。以下に列挙すると、①近衛本(京都大学図書館/現地調査)、②山田以文本(静嘉堂文庫/現地調査)、③曼殊院本(国文学研究資料館にマイクロフィルムでの複写を依頼)、④三浦為春本・中原職忠本(國學院大學/現地調査)、⑤石川忠総本(神宮文庫/現地調査。複写不可)、⑥卜部一本・吉田良熙・八雲軒本・隠顕蔵本・神楽岡庫本・中臣連重本・延春筆巻第六・先代旧事本紀神代本紀・先代旧事本紀巻第一・二(以上、天理大学図書館/複写物を送付依頼)、⑦秘閣本(宮内庁書陵部/現地で複写物を調査)、⑧谷森善臣本(宮内庁書陵部/複写物を送付依頼)、⑨白雲書庫本・楓山文庫本(無窮会神習文庫/現地調査)、⑩冷泉為経本(国立歴史民俗博物館)、⑪徳川光圀本(国立公文書館内閣文庫)、⑫徳川頼房本(彰考館/マイクロフィルム化依頼まで)、⑬徳大寺家本(東京大学史料編纂所)である。 ⑨(楓山文庫本)と⑩は鎌田純一の『先代旧事本紀の研究校本の部』にも詳述されていない写本である。また⑬は今まで全く紹介されてきていない新しい写本である。今のところの調査では、⑬・⑩は強い親近性を持ち、それに近い写本として④(三浦為春本)と⑨(白雲書古本)があると判断している。 また、⑤と⑥(卜部一本)の関係についても、従来の説に付け加えるべきことがあるとの調査の結果を得ている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
『先代旧事本紀』の卜部兼右本と石川忠総本の調査を中心としながら、諸写本全体の複写の収集と調査も同時に行った。細かい異同の点検も必要となるためである。そのため、本年の研究としては、各所蔵機関への出張と閲覧が非常に多くなり、支出も複写についてが一番多くなった。 卜部兼右本の研究成果として、翻刻を公にした。精確な翻刻を心がけたために第一冊のみとしたが、続けて残りも示していきたい。 石川忠総本は所蔵の神宮文庫で貴重書に分類されているため、複写依頼ができず、実地調査をするしかない。本年度は、伊勢神宮の式年遷宮の年にあたり、また神宮文庫の補修工事もあったため、一度しか調査に行くことは叶わなかった。ただしそのぶん、卜部一本や卜部兼右本、また卜部兼永本との比較調査を進めることができた。鎌田純一の研究ではやや曖昧であった系統について、分明な意見をまとめることができそうである。天理図書館から複写を受けた延春本巻第六との比較も含めて、研究成果を公にしていきたいと考えている。 東京大学史料編纂所所蔵の徳大寺家本は、今まで知られることのなかった写本であり、貴重な発見と考える。恐らく関係が深いと考えられる、三浦為春本(國學院大學図書館)、白雲書庫本(無窮会神習文庫)との関係を中心に、意見をまとめつつあるところである。 以上、写本全体の調査は着実に進んでいるものであり、順調な進展といえると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度のまとめとして、特に石川忠総本と卜部兼右本の両本についての考えをまとめたい。 石川忠総本と卜部一本との親近性は説かれてきたが、その具体的な跡付けを論としてまとめるつもりである。新出の延春本巻六も視野に入れつつ、『先代旧事本紀』の原文復元に努める。 また卜部兼右本については、石川忠総本との関係も考えつつ、本文の特徴をまとめていく。同じ天理図書館蔵の先代旧事本紀巻第一・二も近い関係にあると考えられ、そうした他写本との比較の中で特徴を捉えることとする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
予定していた神宮文庫への出張が、式年遷宮や文庫の修繕工事のためにより叶わなかったため。 神宮文庫への出張費用、また未調査の写本の調査・複写費用として用いる予定である。
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Research Products
(1 results)