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2014 Fiscal Year Annual Research Report

<空腹>のアイルランド:現代アイルランド小説における大飢饉表象の政治性を読み解く

Research Project

Project/Area Number 24720125
Research InstitutionYasuda Women's University

Principal Investigator

田多良 俊樹  安田女子大学, 文学部, 准教授 (40510467)

Project Period (FY) 2012-04-01 – 2015-03-31
Keywordsアイルランド大飢饉 / 現代アイルランド小説 / 民族主義 / 記憶 / James Joyce / Joseph O'Connor / John Banville
Outline of Annual Research Achievements

本年度は、本研究の最終年度であるため、アイルランド大飢饉を直接には体験していない作家で、かつ現在活躍中の作家を研究対象とした。なかでも注目に値するのが、Joseph O'Connor(1963-)の Star of the Sea である。本作品は、大飢饉当時にアイルランドからアメリカへ向かう移民船を舞台としており、技法的にはいわゆる「モンタージュ」の手法が駆使されている。手紙、引用、一人称の語り、議事録、航海日誌、バラッド、広告、新聞の切り抜き、史料といった大飢饉をめぐる種々の言説の集合体である本作品は、大飢饉に関するO'Connor自身のリサーチの産物であり、かつ大飢饉に関する多角的な視点を読者に提供している。この意味で、Star of the Seaは、ポスト大飢饉の歴史編纂小説である。
ただし、それは、たとえば John Banville の小説 Birchwood のように、実験的な小説形式で描写することによって大飢饉の記憶を曖昧化することを意図していない。むしろ、O'Connorは、大飢饉の多面性を示すことで、大飢饉の責任の所在を相対化していると言える。つまり、Star of the Seaで問題化されるのは、大飢饉を作り出したと歴史的に非難されてきたイングランド人だけではなく、大飢饉で利を得たアイルランドの商人階級と裕福な農民なのである。
アイルランド大飢饉におけるアイルランド人の有責性を可視化した点において、O'Connor の Star of the Seaは、大飢饉小説の系譜における新展開を見せている。この点を把握できたことは、本研究の大きな成果と言える。今後すみやかに、この考察結果を論文化したい。
また、本作品を検討したことで、大飢饉小説と移民文学の関連性に気付くことができた。この点は、今後の研究に盛り込んでいきたいと考えている。

  • Research Products

    (1 results)

All 2014

All Presentation (1 results)

  • [Presentation] 牙を剥くJoyce―Stephenの吸血鬼詩のcounter-vampirism2014

    • Author(s)
      田多良俊樹
    • Organizer
      日本ジェイムズ・ジョイス協会
    • Place of Presentation
      法政大学55号館(東京都千代田区)
    • Year and Date
      2014-06-14 – 2014-06-14

URL: 

Published: 2016-06-01  

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