2016 Fiscal Year Annual Research Report
Property and exchange in the formation of Soviet subjectivity: A study of official literature under Stalin
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24720149
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
平松 潤奈 金沢大学, 国際基幹教育院, 准教授 (60600814)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ソヴィエト文学 / スターリン時代 / 後期ソ連 / 新経済批評 |
Outline of Annual Research Achievements |
まず、6月の岩波ロシア革命論集研究会における発表(「再始動する批判的知性――ポスト・スターリン期の文学と社会」)で、スターリン時代とそれ以後(後期ソ連時代)の社会・経済がどのように変容していったのか、それが同時代の文学テクストの主題や経済表象にどのような影響を与えたのか(経済問題が、転換期の文化表象においてどのように重要と言えるのか)を論じ、またそれに先立って、これらの時代に関する現代の研究の基本的動向をまとめて報告した。この発表では、主に歴史学の専門家から多くの助言をもらい、それを受けて、「交換」の概念を軸に論文「テロルから日常へ――ポスト・スターリン期の文学と社会」を執筆した(2017年度刊行予定)。 また、12月にはシンポジウム「社会主義リアリズムの国際比較」において、「社会主義リアリズムにおけるリアル――表象、欲望、存在」と題し、スターリン時代の、イデオロギー統制を受けた文学のナラティヴや文化表象と、その外部の問題について論じ、特に、「ソヴィエト的主体」形成(とその破壊)を促す論理について詳しく説明した。またそうした文化表象が形成されるにいたる歴史的な諸段階について、経済政策と表象の関係性に焦点を置きつつ整理した。個人報告のあと、他の地域や専門分野の研究者とのラウンドテーブルにも参加し、知見を広げることができた。 さらに、この研究の問題関心の延長にあたるものとして、ソ連崩壊後のロシアで高まるソ連ノスタルジーにおいて、後期ソ連とともにスターリン時代への回帰現象が見られること(その経済的側面を好意的に見る傾向も生じていること)、ソヴィエト的主体性の概念がソ連崩壊後の人々によって再獲得されていることなどが、注目に値する。今後の研究につなげていきたい。
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