2012 Fiscal Year Research-status Report
ベルギーの「方言」復権運動における標準語についての研究
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24720173
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
石部 尚登 名古屋市立大学, 人文社会系研究科, 研究員 (70579127)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | ベルギー / ワロン語 / 復権運動 / 正書法 / 標準語 |
Research Abstract |
平成24年度は、8月の後半に3週間および翌年2月に2週間、ベルギーで現地調査を行った。当初の研究計画に従い、方言復権運動における標準語設定の意味と問題点、および一般の人々の方言の標準語化についての意識の2つの課題について、文献・資料の収集と次年度以降の研究のための予備的調査を行った。 前者については、まず1990年代に集中的になされた復権のためのワロン語の標準化の議論に関して、未刊行のものを含む資料の分析とそれに参加していた当事者への聞き取りを実施した。その結果、スイスのロマンシュ語の標準化がワロン語における議論の直接の契機となったという点や、立場の違いをこえ当時標準化に大きな期待を寄せられていたことなどが明らかになった。これらの成果は、その後運動の進展に伴い生じた問題点とともに、「ワロン語の標準化―方言学者と復権運動家の同床異夢」としてまとめ、25年度中に刊行する予定である。 また、運動に携わる団体が発行している雑誌(『私たちのことば』、『ワロン語を話そう』)を収集を行い、そのうち『エル・ブルドン』、『リ・ラントウェル』については電子化まで完了した。すでにこれまでの研究で電子化済みの雑誌とともに、これらの電子資料を用いて次年度に比較分析を行い、復権運度における標準語観についての意義をさらに明らかにする。なお、こうした復権運動の現状についての調査の過程で明らかになった近年のICTを活用した新しい復権運動と、それにもたらされた運動形態の変容については、12月に多言語社会研究会の第7回研究大会において報告を行った。 後者の課題については、上記の調査と並行して、次年度に実施予定のアンケート調査の調査地の選定を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2つの課題のうちの方言復権運動における標準語設定の意味と問題点については、おおむね計画通りに研究が進展している。もう1つの課題、および一般の人々の方言の標準語化についての意識の2つの課題については、現地の運動家の助言に従い、シャンパーニュ語とロレーヌ語の話者領域については、その使用領域の規模の問題から調査対象から外すこととした。また、残りの3つのアンケート調査地についても、それぞれの地域の地域語の活力が大きく異なるため、量的な比較を目的としたアンケート調査は困難であるとの助言もえた。より質的な比較を目的とする聞き取りへの調査方法の変更も含めて、検討する必要が生じたため。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画に従い、課題1については雑誌の比較分析を行い、それにより得られた情報に基づいて、インタヴューの内容を準備する。 課題2については、先述の問題から、調査の目的をより質的なものへと移すことを視野に入れ計画を行い、平成25年度の中頃または後半に現地調査を敢行する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし。
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