2014 Fiscal Year Annual Research Report
ベルギーの「方言」復権運動における標準語についての研究
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24720173
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
石部 尚登 日本大学, 理工学部, 助教 (70579127)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | ベルギー / ワロン語 / 標準語 / 方言 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度は、昨年度に決定した量的調査から質的調査への研究手法の変更にしたがい、当初の研究計画で予定していた2つの課題のうち、第一の課題「運動における標準語設定の意味と問題点」に重点を置き調査を行った。 昨年度までに収集、電子化を行ってきたワロン諸語に関係する雑誌の比較分析を継続するとともに、9月に一週間ベルギーに滞在し聞き取り調査を行うことで、復権運動の関係者間における標準語観の違いが運動の進展を遅滞させる最大の要因となっていることがあらためて確認された。 また、20世紀の後半になり社会運動としての方言復権運動が登場するまでは、立場の違いや標準語観の違いは存在しながらもその差異は限定的であり、実際の使用者の間にも方言の標準語に対する意識も大きな違いがなかったことが明らかになった。この点については、11月9日に西宮市大学交流センターで開催されたルクセンブルク学研究会とベルギー研究会の共同セミナーにおいて「「方言」の書記化:ワロン語正書法の歴史から」として発表した。 さらに、上記のようなとりわけ20世紀後半における方言に対する標準語の意識の変遷の背景には公用語としてのフランス語の確立の流れが存在すること、および公用語の「正しい」形態の普及の障害としてゆるやかな方言の標準語の存在が盛んに活用されたことが明らかになった。本成果は、平成27年3月4日にベルギー・ブリュッセルの神戸大学ブリュッセルオフィスで開催された第59回ベルギー研究会ブリュッセル国際大会における「ベルギーにおける言語規範の輸入と輸出」の一部として公表した。
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Research Products
(5 results)