2012 Fiscal Year Research-status Report
文生成における「派生」の役割とそのメカニズムに関する理論的・実証的研究
Project/Area Number |
24720199
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Dokkyo Medical University |
Principal Investigator |
水口 学 獨協医科大学, 医学部, 講師 (90555624)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 派生理論 / 極小主義プログラム / 生成統語論 |
Research Abstract |
平成24年度の研究では、平成24年度の研究実施計画を遂行する前に、昨年度から進めてきた派生計算の仕組みに焦点を当てた研究を行った。本研究では、現在の極小主義文法理論の中に生じる表示レベルを取り除く提案を行い、具体的な言語現象を通してこの提案の妥当性を実証した。本研究は、申請した研究課題の中に含められる研究であり、派生と表示の間に生み出される余剰性を解決するという意味において重要である。また、研究課題の目的である「派生プロセスのみで言語能力を説明する文法理論を構築する」に沿ったものであり、派生の役割を明らかにする本研究課題の一端を達成することができたと考えられる。 上記の研究と共に、平成24年度の研究実施計画に基づき、文法演算の原動力である「素性」とその構成の研究に取り組んだ。本研究は申請者が行った研究を基礎にし、その再検討を含めながら研究を進めていった。素性には解釈可能なものと不可能なものに分かれるが、本研究はEpstein, Kitahara and Seely (2010)等の重要な研究成果を踏まえながら、特に解釈不可能な素性が派生計算の中で果たす役割について理論的な考察を加え、それをデータの観察を通して実証的に検証した。また、素性の構成が演算の適用に重要な役割を果たすことを明らかにし、素性構成のパラメータ化が文法現象における言語間の違いを生み出していることを仮説として提示した。素性構成のパラメータ化に関しては、狭義の統語論の演算である併合がそれに係わっているのではないかという方向性を示した。本研究は派生計算の姿を明らかにすることに寄与するため、その意義は大きいと考えられる。素性に関する研究はまだ進行段階であり、より幅の広い経験的考察が必要になる。来年度以降の研究計画で遂行する研究計画とリンクさせながら、本研究を継続していく。本研究成果をまとめた論文は、現在執筆中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度の研究実施計画では、派生計算を生み出す「素性」に焦点を置き、その中身と構成を検討することを主たる研究課題としていた。実施計画に基づき、素性の構成とそれが派生計算にどのように係わるのかという点に関しては当初構想していた通りに研究を進めることができたと思う。しかし、本年度の研究を通して行った理論的考察と実証的検証から出てきた仮説や方向性に関してはまだ検討することができていない部分が多く残っており、次年度以降の研究で検討を行わなければならない部分もある。当初の研究構想に基づいた研究はおおむね遂行することができていると判断できるので、進展状況は順調であると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究は本研究課題の「研究計画・方法」に基づき、文法演算のメカニズムの解明と派生計算の研究というふたつの柱を中心に研究を進めていく。3年間に及ぶ本研究課題はお互いに関連しており、前年度行った研究を十分に踏まえた上で次年度以降の研究を進めると同時に、前年度の研究によって生じた成果を再評価しながら研究を進めていく。今後進める研究に関しては近年の研究で重要な研究成果が報告されているので、学界の研究成果を十分に踏まえ、検証しながら、本研究課題の目的を達成に向けて研究を着実に進めていく。国内外の研究者の協力を得ながら、本研究課題を遂行するつもりである。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度の研究を遂行するに当たって、研究課題に関係する書籍が必要になる。また、研究成果を発表したり、研究交流を行うために旅費が必要になる。次年度に請求する研究費は、今年度の繰越金分を含めて、①書籍の購入、②旅費、③消耗品(論文整理ファイル、トナー等)の購入に充てる計画である。
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