2013 Fiscal Year Research-status Report
文生成における「派生」の役割とそのメカニズムに関する理論的・実証的研究
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24720199
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Research Institution | Dokkyo Medical University |
Principal Investigator |
水口 学 獨協医科大学, 医学部, 准教授 (90555624)
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Keywords | 併合 / 移動 / 派生理論 / インターフェイス条件 |
Research Abstract |
本研究は、ミニマリスト・プログラムと呼ばれる言語理論の枠組みに依拠し、文生成における派生の役割とそれを生み出すメカニズムについて、理論的な研究を行うことを目的としている。平成25年度の研究では、主に文法演算のメカニズムの解明という点に焦点を当て、研究を遂行した。現在の生成文法理論では、普遍文法の中身をできるだけ単純化する方向で研究が進められているが、この一つの帰結として、演算は計算において自由に適用されるということが導かれる。 平成25年度は、統辞構造物を生み出す併合という演算について考察した。現在のミニマリスト・プログラムが正しいとすると、併合は統辞計算内においては自由適用となり、Third-factor principlesと呼ばれる最適計算の原理によってその適用が制限されることになる。併合の自由適用の結果、移動は内的併合として捉えられることになるが、もし移動が内的併合であるとすると、移動はこれまでの生成文法研究での考え方とは異なり、制約が一切かからない自由な演算ということになる。 平成25年度の研究においては、併合の性質を考察する上で、優位性効果と呼ばれる現象に着目し、A移動とAバー移動に観察される移動の優位性に関して、強いミニマリスト仮説の下で、新たな分析を提案した。A移動とAバー移動に見られる優位性の効果が従来考えられていたのとは異なり、統辞計算の遂行が優位性効果をもたらすのではなく、統辞計算によって作られた統辞構造物が転送され、インターフェイスに送られた際にインターフェイス条件を破ることによる派生計算の破綻に帰することができることを明らかにした。この成果は、統辞計算において併合演算は自由に適用されることを裏づけ、また、強いミニマリスト仮説を支持することになるという意味で重要である。本研究は、言語がインターフェイス条件を満たす完璧なシステムであることを示す一つの事例であると考えることができる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
一部着手できなかった課題もあるが、研究目的に基づき、研究課題をおおむね順調に進めることができた。着手できなかった部分に関しては、次年度の研究の中で、次年度の研究課題の一部として取り組むつもりである。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度も、研究計画に基づき、研究課題を遂行し、成果を出していく。平成26年度の研究は、平成25年度の研究を基に行う。研究を遂行する中で、研究計画に変更が生じる可能性があるが、その場合にも当初の研究計画との相関を意識しながら、研究を推進していく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度の研究を遂行するため、言語学関係の書籍や消耗品等が必要になる。また、研究成果を発表したり、研究上の交流を行うために旅費が必要となる。 次年度に請求する研究費は、今年度の繰越金文を含めて、①言語学書籍の購入、②旅費、③消耗品(研究用パソコン、プリンタートナー、論文整理用ファイルなど)の購入に当てる計画である。
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