2014 Fiscal Year Research-status Report
文生成における「派生」の役割とそのメカニズムに関する理論的・実証的研究
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24720199
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Research Institution | Dokkyo Medical University |
Principal Investigator |
水口 学 獨協医科大学, 医学部, 准教授 (90555624)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 統辞理論 / 極小主義 / 派生メカニズム |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度の研究では、派生計算の仕組みについて、主語の移動現象を中心に検討した。今年度の研究では、このフェイズに基づく最適な派生計算メカニズムを追求することを目的とし、フェイズを仮定する理論モデルの中で主語移動の派生に関する研究を行った。まず、本年度の研究では、主語のA移動が示す反循環的移動の問題を取り上げ、循環転送に基づく主語の移動分析を新たに提案した。この提案が反循環性の問題を解決することができることを明らかにし、同時に、理論的にも経験的にも妥当な帰結をもたらすことを明らかにした。 本年度の研究ではまた、主語のA'移動についても検討した。A'移動の例として、主語のwh移動の派生について研究を行った。強い極小主義のテーゼ(SMT)の枠組みの中で、従来の提案とは異なり、主語wh句がTPとは併合しないことを明らかにした。また、この分析では、CP指定辞における主語のA性の性質とTのEPPの性質に関して問題が生じることになるが、主辞移動を素性移動よってこの問題を解決できることを明らかにした。本年度の研究では、主辞移動に関して、それが素性継承と裏表を成す「素性上昇」として定式化できることを提案し、この提案によって理論上、何も問題を起こさずに主辞移動が可能になることを明らかにした。更に、主語のA'移動に関するこの提案がドイツ語に見られる主語先頭の動詞第2現象も説明することができ、また、主語の長距離A'移動の際に観察されるthat痕跡効果を導くことができることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度の研究においては、科研費の課題研究を遂行する中で検討しなければならなくなった事項を主に取り上げた。今年度の研究では、主にその事項を検討し、研究を進めたため、当初の申請書に記載した研究目的を完全には達成していない。しかし、今年度の研究において検討したテーマは科研費課題と密接に関係していることから、研究はおおむね順調に進展していると評価することができ、ある程度当初の研究目的の達成が図れたと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
申請当初の研究計画に従って、今後の研究を進めていく。今後の研究においては、まず、平成26年度から継続している主語wh句移動に関する研究を更に深化させ、内的併合による最適な派生メカニズムを解明していく。また、自身の先行研究を更に発展させる形で移動の制約の問題を取り上げる。その中で、不適格とされる移動現象が極小主義統辞論の自由併合の枠組みの中でどのように導かれるのかをより深く検討し、様々な言語現象を統合していく。
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Causes of Carryover |
昨年度までの2年間の研究を遂行する中で、主語移動の派生に関する新たな検討事項が生じ、今年度の研究計画を進める上でこの事項を検討する必要が生じた。このため、派生計算全体に関する今年度の研究計画を変更し、主語移動の研究に焦点を絞って研究を行ったため、未使用金額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
上記の理由のため、派生計算全体に関する研究とその研究成果の発表を次年度に行うことにし、未使用金額はその経費に充てる。
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