2015 Fiscal Year Annual Research Report
文生成における「派生」の役割とそのメカニズムに関する理論的・実証的研究
Project/Area Number |
24720199
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Research Institution | Toyo University |
Principal Investigator |
水口 学 東洋大学, 社会学部, 准教授 (90555624)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 言語学 / 統語論 / 生成文法論 / 派生計算論 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、ミニマリスト・プログラムと呼ばれる言語理論の枠組みに依拠し、文生成における派生の役割とそれを生み出すメカニズムについて、理論的・実証的研究を行うことを目的としている。平成27年度の研究では、平成25年度の研究に引き続いて、主に統語演算のメカニズムの解明に焦点を当て、人間言語の統語構造物を生み出す「併合」という演算を考察した。
現在のミニマリスト・プログラムが正しいとすると、併合は統語計算内においては自由適用となり、Third-factor principlesと呼ばれる自然界の最適計算の原理によってその適用が制限されることになる。併合の自由適用の結果、移動は内的併合として捉えられることになるが、もし移動が内的併合であるとすると、移動はこれまでの生成文法研究での考え方とは異なり、制約が一切かからない自由な演算ということになる。
平成27年度の研究においては、併合の性質を考察する上で、「不適格移動」と呼ばれる現象に着目し、不適格移動が自由併合の下でどのように排除されるのかに関してミニマリスト・プログラムの枠組みの中で新たな分析を提案した。不適格移動が従来の提案とは異なり、統語計算内の制約によって排除されるのではなく、統語計算によって作られた統語構造物が転送され、インターフェイスに送られた際にインターフェイス条件を破ることによる派生計算の破綻に帰することができることを明らかにした。この成果は、統語計算において併合演算は自由に適用されることを裏づけ、また、強いミニマリスト仮説を支持することになるという意味で重要であると考えられる。本研究は、言語がインターフェイス条件を満たす完璧なシステムであることを示す一つの事例となる。
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