2013 Fiscal Year Research-status Report
類推ネットワーク・モデルを用いた日本語文法の変化に関する認知言語学的研究
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24720211
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Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
尾谷 昌則 法政大学, 文学部, 教授 (10382657)
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Keywords | 類推ネットワークモデル / 認知言語学 / 言語変化 |
Research Abstract |
25年度は、動詞の丁寧な否定形である「V-マセン」型から「V-ナイデス」型への変化について調査・研究を行い、「V-マセンからV-ナイデスへの変化要因に関する一考察」という論文にまとめた。従来の規範形であった「V-マセン」型に加え、近年「V-ナイデス型」がその使用を拡大しつつある現状について既存コーパスおよび自作コーパスで確認した上で、その変化要因が(1)丁寧さが対人的モダリティの一種であると意識されたために、動詞語尾の文法カテゴリーの配列を「V-丁寧モダリティ-否定」から「V-否定-丁寧モダリティ」へと組み替えたのではないか、(2)マセン型はフォーマルな丁寧否定形だが、それよりも相対的にカジュアルな丁寧否定形としてナイデス型が好まれるようになったのではないか、と分析した。 (1)については、ナイデス型に終助詞との共起事例が非常に多いという定量的事実から裏付けられるが、このような構文的・文法的変化が、語用論的要因によって引き起こされている点が理論的には非常に面白い点であるといえる。従来の統語論では、言語構造を意味や語用論的要因とは切り離して捉えることが多かったが、それは既存の言語表現に対する説明原理を追求しただけにすぎず、新規な構造がなぜ許されるのかについては説明能力を持たなかった。しかし、構造そのものも意味を持つと考える構文文法理論にとっては、本事例のように語用論的要因が構造を決定していると考えられる現象は格好のサポート事例になるため、その意義は大きいと考えられる。 (2)については、近年、丁寧体と普通体の中間的な存在として(つまり、ネガティブポライトネスとポジティブポライトネスの両方をバランス良く実現するために)新たな表現を生み出すという現象が少なからず起きており、本事例もその一例として捉えられるという可能性を示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
25年度は学部教授会副主任という役職に就いたため、1週間の半分を会議(とその準備)および学部運営諸業務のために費やしていたような状態であった。もちろん通常の校務もあったため、エフォート率が著しく低下してしまい、予定していた小説スキャンを完了できなかったが、事例研究の1つはなんとか形になったと思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
26年度は、わずかに残っている未データ化の小説をスキャンして簡易小説コーパスを完成させるとともに、いわゆる「ヲ入れ言葉」と接続詞化した「なので」についての事例研究を行う予定である。4ヶ年計画で予定していた事例研究は5つであったが、本年度に「ヲ入れ言葉」と「なので」の事例研究を形にすることができれば、次年度(=最終年度)になすべき事例研究は2つとなるため、計画の遅れを取り戻すことは十分可能であると判断する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
25年度に実施する予定であった小説データ入力作業が滞ったため、データ入力補助業務へ支払う予定だった謝金が未消化に終わってしまった。また、事例研究を学会で発表することができず、その旅費も未消化に終わってしまった。 データ補助業務への謝金については26年度で全て消化する予定である。学会発表の旅費については、まだ事例研究が4つ残っているため、26・27年度にかけて消化する予定である。
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Research Products
(1 results)