2012 Fiscal Year Research-status Report
「フェイズ理論」の検証:移動現象と補文化辞の振る舞いを中心に
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24720219
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
小畑 美貴 三重大学, 人文学部, 准教授 (80581694)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 国際情報交換 / アメリカ |
Research Abstract |
2012年度は、統語派生の仕組みの一端を解明することを中心に研究を行った。Chomsky (2005)では、派生における制約は言語演算を含む(認知システム内の)全て演算に対して一様に適用されるものであり、よって言語専用のパラメタ―を設定することはできないとしている。言語演算で適用される操作には、併合(Merge)、一致(Agree)、転送(Transfer)などがあるが、これらの操作がどのような順序で適用され、順序の違いにより、個別言語間の違いを、Chomsky (1981)において提案されているパラメタ―に訴えることなく、説明することができるか、可能性を追求した。 特に注目した言語現象は、英語とバンツー系言語のキレガ語(Kilega)におけるWH移動の振る舞いの違いに関してである。英語では、移動しているWH句がどのような要素であろうと、必ず主節Tと主語が一致を行う。これに対し、キレガ語では、主節Tは移動しているWH句と一致を行う。つまり、Tの一致相手は目的語である場合もあり、必ずしもいつも主語と一致を行うわけではないという違いがある。このような個別言語間の差異に対し、本研究では「同一の制約に従っているが、制約の適用される順序が異なる」と主張した。具体的には、英語とキレガ語では以下のような順序で統語操作が適用される。 英語 ①CからT への素性継承、②Tと主語との一致、③WH移動、④転送 キレガ語 ①WH移動、②CからTへの素性継承、③TとWH句の一致、④転送 このような主張を行うことで、言語演算に対して個別言語用に特定のパラメタ―の値を取り決める必要はなくなり、同じ言語演算を適用することが可能となる。更にこの主張を他の言語現象、「ケープ・ベルディアンクリオールとハイチクリオールにおける補文化辞とWH移動の関係」によっても検証を行い、本主張をより強化するに至った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2012年度はとても順調に研究を進めることができたと思われる。まず、研究目的①「ケープ・ヴェルディアンクリオール(CVC)及び英語のWH移動と補文化辞の振る舞いに関する研究」に関しては、英語、CVC、ハイチクリオール、キレガ語の4言語においてみられる言語間差異に関して研究を行い、それぞれの言語においてみられる文法的振る舞いを観察・分析することができた。 また、研究目的②「「転送」操作の研究」に関しては、上記の研究目的①において得られた言語データに基づき分析を行うことで、「転送」を含む統語操作の適用メカニズムの一端を明らかにすることができた。2つの研究目的を有機的に関連付けることができたことで、記述的にも、理論的にも有意義な研究を行うことが出来たように思われる。当初の計画では「転送」操作のみに注目するはずであったが、より広い視野を持ち、「転送」を含む統語操作全般へと考察を広げることが出来たことは、大きな収穫であった。 研究成果は、2013年1月にアメリカ・ボストンで開催された、アメリカ言語学会などにおいて発表し、現在論文を学会誌へ投稿中である。上記の研究は、Samuel Epstein教授(ミシガン大学)、Marlyse Baptista教授(ミシガン大学)との共同研究であるが、私(小畑)が学会発表及び論文執筆を筆頭者として行った。
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Strategy for Future Research Activity |
2013年度は、2012年度の研究成果をさらに発展させることで、研究を進めていく予定である。まず、ケープ・ヴェルディアンクリオールに関しては、新しい言語データの収集をMarlyse Baptista教授(ミシガン大学)の協力の下で行う予定である。2012年度は補文化辞と項位置にあるWH句との関係を中心に考察を行ったが、2013年度は付加部にあるWH句と補文化辞との関係に関して研究を行う予定である。項と付加部に間には、どのような違いがCVCにおいてあるのか、またその言語データが統語理論にどのような示唆を与えるのか、検討する。Baptista氏との連絡は、電話やメールを中心に使用して行う予定である。研究成果を国際学会で発表することを目指している。また、「転送」操作に関しては、転送を含む統語操作全般の仕組み、特に言語演算の中でどのようにして構造が組み立てられていくのかを中心に、研究を行う予定である。こちらの研究成果も、国際学会での発表を目指す予定である。 また、2012年度に学会誌に投稿済みの論文の査読が終了次第、査読コメントを参考に論文の加筆修正を行い、2013年度中に出版が確定するように取り組む予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
直接経費70万円を以下のように配分予定である。 国際学会での発表にかかる諸経費として 50万円 国内研究打ち合わせ旅費や謝礼金として 10万円 図書費として 5万円 印刷代及びその他文房具などとして 5万円
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Research Products
(4 results)