2013 Fiscal Year Annual Research Report
「フェイズ理論」の検証:移動現象と補文化辞の振る舞いを中心に
Project/Area Number |
24720219
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
小畑 美貴 東京理科大学, 理学部, 准教授 (80581694)
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Keywords | 転送 / インターフェイス / 主節 / 付加部 |
Research Abstract |
2013年度は、統語派生の過程において適用される「転送(Transfer)」の仕組みの解明に取り組んだ。また、転送操作の観点から、主節と補文の特性やそれぞれの節の固有の振る舞い等にも注目し研究を行った。 統語派生の中で構築された統語表示は、インターフェイスへと送られ、音声や意味の計算が行われる。この送るための操作が転送であるが、転送の強さには依然として疑問が残っている。転送操作が「強い」ものであるなら、インターフェイスへ統語表示が送られた後は、統語論内には表示は一切残らず、完全に削除されることになる。一方で「弱い」操作であるなら、転送はある種の「コピー」作業であり、転送後もコピーのオリジナルが統語論内部に残存することになる。この2つの可能性を検証する為に、派生の過程でフェイズ全体が転送を受けるケース(主節や付加詞)に注目した。結果として、後者の「弱い」転送操作が支持されるという結論が得られた。 また、主節と付加部は補文とは異なる振る舞いをする可能性があることを、Miyagawa (2010)などで議論されている数量詞解釈の現象に基づき研究を行った。これまで「全員が試験を受けなかった」という文は主節では「全員」>否定 という読みしか得られないが、補文の中では「全員」<否定 の読みも得られるということが指摘されている。この観察を更に発展させ、本研究では付加部へ埋め込んだ場合には、再び「全員」>否定という読みしか得られないことを指摘した。つまり、主節と付加部は数量詞の読みに関しては、同じ振る舞いをし、補文のみ異なることがわかった。これは、前段落で述べた転送操作に関しても当てはまることであり、Obata (2010, 2011, 2014)で指摘した転送操作は主節・付加部はフェイズ全体に適用される一方で、補文はフェイズの一部が転送されるという主張を経験的に裏付けることとなった。
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Research Products
(2 results)