2013 Fiscal Year Research-status Report
統語論と語用論のインターフェイスに関する日英語対照研究
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24720223
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Research Institution | Nara Women's University |
Principal Investigator |
今野 弘章 奈良女子大学, 人文科学系, 准教授 (80433639)
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Keywords | 類像性 / 周辺的現象 / 機能範疇 / 伝達意図 |
Research Abstract |
本研究課題は、以下の2つの類像性を検証することを目的とする。①ある言語表現が統語構造において機能範疇を欠くという形式的特性とその表現が意味構造において話者の伝達意図を欠くという機能的特性との関連、②機能範疇を持つという形式的特性と伝達意図を持つという機能的特性との関連。 平成25年度は、(ア)イ落ち構文(例「うまっ!」)、(イ)日英語の非伝達的構文とその文法的意義、(ウ)形容詞「やばい」の副詞的用法(例「これやばいうまい。」)、(エ)複合的助詞表現「からの」の単独用法(例「か~ら~の~?」)について研究を進めた。(ア)(イ)は上述の類像性①に、(ウ)(エ)は類像性②に関連する。 (ア)では、イ落ち構文の形式的、機能的特性がその構成要素である促音「っ」には還元できないことを明らかにした。この結論は、今野 (2012)で主張したように、イ落ち構文が構文文法における「独立構文」としての資格を持つことを示唆する。研究成果は、日本言語学会第147回大会で口頭発表し、所属大学の紀要に論文として発表した。 (イ)では、日英語において非伝達的用法に特化した構文が存在することから、両言語の文法が「非伝達的」という語用論的区分を活用していることを主張した。この内容は、日本英語学会第31回大会ワークショップで口頭発表した。 (ウ)では、形容詞「やばい」の副詞的用法が伝達的使用を基本とすることを示し、その志向性を「動的ミスマッチ解消」という観点から動機づけた。この成果は、和光大学で開催されたワークショップと第42回奈良女子大学英語英米文学会年次大会で口頭発表した。 (エ)では、複合的助詞表現「からの」が単独で用いられる現象の文法的特徴を記述し、当該用法と日本語の文法体系との関連を考察した。この研究は平成26年6月に関西言語学会第39回大会で口頭発表(招聘)することが決定している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
以下4つの理由により、本研究は現時点でおおむね順調に進展しているといえる。 1.(ウ)(エ)の研究で(類像性①だけでなく)類像性②に合致する可能性のある現象を示すことができた。 2.(ア)(ウ)(エ)の研究で、伝達意図の有無という観点を取り入れて現象を記述することで新たな言語データを提示することができた。 3.(イ)の研究で、日英語の文法体系が伝達的側面と非伝達的側面の両方から成り立っていることを示すことができた。 4.研究成果に関しては、口頭発表をした後に論文化するという流れを想定している。一部の成果はすでにそのプロセスを経て公表されており、それ以外の成果についてもすでに口頭発表が済んでいる(あるいは決定している)。
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Strategy for Future Research Activity |
・平成26年度は本研究課題の最終年度のため総括的な考察を行う予定である。その過程では、(イ)の研究成果を踏まえ、本研究課題から派生するテーマについても考察する。 ・類像性①と類像性②に関わる可能性のある現象を継続して探求する。 ・平成25年度に口頭発表した内容を論文にまとめ、学会誌・紀要に発表する。
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Research Products
(5 results)