2012 Fiscal Year Research-status Report
実践研究理論構築のための調査研究ー実践と教育制度との関係をてがかりにー
Project/Area Number |
24720227
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
|
Research Institution | Akita University |
Principal Investigator |
市嶋 典子 秋田大学, 学内共同利用施設等, 助教 (90530585)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | 実践研究 / 制度論 / 評価論 |
Research Abstract |
本研究では、日本語教育において、概念規定さえ明確でない実践研究の問題を、文献調査と日本語教師および学習者へのアンケート、インタビュー、授業観察の調査結果の分析を通して考察した。教師や学習者は、教室において、どのような実践活動を形成しているのか、そして、教育制度や政策は、教師の実践、思考、意識にどう影響を及ぼし、学習者の学びにいかに反映されているのか、これらの実態を検証し、構造を明らかにすることを目指した。その上で、日本語教育学としての実践研究の位置づけを明確化し、実践の構築に寄与する新たな理論を提案することを目的とした。 具体的には、実践研究に携わる教師にインタビューを行い、①どのような教育環境のもとに実践をデザインし、②制度や社会状況と自身の実践との関係をどのように意味づけ、何を契機にそのような意識を持つに至り、③現在、いかなる教育観の中でそれを維持しているのかを分析した。また、日本語教師へのインタビューのみならず、実践に参加する学習者へのインタビューも試みた。本調査を通して、教師や学習者は、社会や制度の縮図ともいえる教室において、いかなるディレンマの解決と調整を通して、どのような実践活動を形成しているのか、そして、様々な制約は、教師の実践、思考、意識にどう影響を及ぼし、学習者の学習、思考、意識にいかに反映されているのか、これらの関係を読み解き、再構築を目指す実践研究はどのような条件において可能なのかを考察した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
日本語教育において,実践研究がいかに捉えられてきたかという歴史的変遷を明らかにする為,文献調査を行った。具体的には,以下の手順で刊行物を選出し,分析を行った。 ICiNii 国立情報学研究所 論文情報ナビゲータシステムから日本語教育分野の論考を「授業」・「教室」・「実践」・「実践研究」のキーワードで絞り込み,該当する文献を多く掲載する刊行物を選出した。IIIで抽出された刊行物の中から,①「教育現場における実践の内容が具体的かつ明示的に述べられている論文」および,②「実践研究についての概念規定がなされている論文」を軸に対象論考を選出した。(①は,日本語教育において,具体的にどのような実践研究が行われてきたのか,②は,日本語教育において実践研究がどう意味付けられてきたのかを把握するために選出した。)III IIで抽出された論考を年代別にまとめ,日本語教育において,どのように実践が取り上げられ,実践研究がいかに捉えられてきたのかの変遷を検討した。 以上の手順に沿って,日本語教育において実践研究の潮流に影響を与えた論考,あるいは実際に,実践を対象として研究を行なっている論考を選出し検討した。これら対象文献をもとに,実践を研究することについてどのような主張がなされ,またどのように実践が取り上げられているかについて検討し,主な論者の主張を軸に年代別に整理しなおした。その上で,発行年数が最も長い『日本語教育』に掲載された論考を軸に日本語教育全体の流れとして記述した。 一方で,当初予定していた,シリアでの調査が国情の悪化により,全く進んでいない。現在,国情の回復を待っているが,もし研究期間内に回復する見込みがない場合は,代替調査対象地を見つける必要がある。代替地としては,韓国の大学を考慮中である。
|
Strategy for Future Research Activity |
国内、海外の日本語教育に関する調査を実施する。主に地方や海外で行われている日本語教育実践現場の現状を把握するために調査を依頼し、スケジュールを決定する。現時点では、国内においては、東北地域の国立、私立大学、地域の日本語教室が、海外においては、日本語学習者が多い,韓国のの日本語教育機関が調査地として有力である。 上記の日本語教育現場で実践研究を行なっている日本語教師と、その教師の授業に参加している学習者を調査対象者として、インタビュー調査を行なう。調査の実施には、現在までの調査研究で既に確保している日本語教師に協力を促す。データの整理、集計、分析と同時進行で教師と学習者へのインタビュー調査を行うことにより、教室内外での教育、学習環境や、言語教育観、学習観、言語観をより詳細に明らかにし,仮説を生成する。数回のインタビューを1年間、縦断的に行う。本研究では、調査の過程、及び結果分析の段階(調査対象者に対するインタビュー、授業観察の段階)において、申請者自身の認知枠や実践研究観及びその背景を示した上で調査を行うことにより、調査対象者の背景、教育環境、教育観を如実に引き出すことを目指す。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究は、①実践研究に関する縦断的な文献調査②教師、学習者に対するインタビュー調査、授業観察記録の分析③理論の検証、修正④分析・考察の成果をまとめ、学会発表、論文発表の形で公表、を中心とするものであるが、これらに対応して経費は、①図書費、②③録音機材、ノートパソコンなどの設備費、消耗品費、インタビュー協力者への謝礼、データの文字化を依頼する調査協力者への謝礼、④学会発表の旅費、論文投稿費が主な必要経費である。尚、②については、対象者の表情や声色を捉えるため、適宜デジタルビデオカメラでの撮影を行いたいと考えている。さらに、国内の学会、研究会をはじめ、海外の国際研究大会にも積極的に参加したいと考えて、参加時に携帯する為の学会の旅費、参加費などに研究費を使用する予定である。
|
Research Products
(6 results)