2013 Fiscal Year Annual Research Report
韓国併合による王公族の創設と天皇制の変容に関する研究
Project/Area Number |
24720297
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
新城 道彦 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 助教 (40553558)
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Keywords | 王公族実録 / 王冊立 / 王公家軌範 |
Research Abstract |
本研究の課題は、1910年の韓国併合で王公族を創設したことによって天皇制が変容していく過程を考察することである。そこで、①王公族の法整備と②歴史書の編纂を中心に調査を進めた。 ①に関しては、王公族が婚姻や養子縁組で内地の一般臣民の家に入ったのちに離婚・離縁した場合、戸籍をどこに移動したかという論点から、昭和2年法律第51号と王公家軌範の不備について考察した。 ②に関しては、まず韓国併合によって東アジアにおける国際関係の伝統、すなわち冊封体制が維持されたのか否かを、天皇と李王の関係から考察した。考察に際して宮内庁宮内公文書館を調査し、『勅使朝鮮差遣録』という重要な資料を入手することができた。この資料に書かれている勅使と韓国皇帝(李王)の席次から、日本側は冊封体制を否定するとともに、冊封体制に固執する大韓帝国に対して一定の配慮(臣下の礼をとらせない)を示していたことが明らかとなった。 以上の韓国併合の特性を踏まえて、日本が王公族の歴史書をどのように編纂したのかを考察した。まずは日本における実録の編纂について、宮内庁が刊行した『宮内省の編纂事業』を調べた。これにより、明治以前、日本では天皇の事績を継続的に記録した史書をほとんど編纂してこなかったことがわかった。 日本では1907年10月に宮内省図書寮の職掌に「天皇及皇族実録の編修に関する事項」が加えられ、15年3月から明治維新後に薨去した皇族の実録編修作業を開始した。この期間に韓国併合があり、王公族が創設されたのである。宮内庁宮内公文書館所蔵の『実録編修録 自大正五年至大正十年』を調査したところ、「皇族ノ礼」を受ける王公族を「実録して之を不朽に伝うる」ことにし、『王公族実録』を編纂したと記されていた。ここから、皇室の正統性を確立するための歴史書=実録と旧韓国皇室たる王公族が不可分であったことが明らかとなった。
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Research Products
(2 results)