2012 Fiscal Year Research-status Report
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24720338
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
姉川 雄大 千葉大学, アカデミック・リンク・センター, 特任助教 (00554304)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 東中欧近現代史 / 人種主義 / 自由主義 / 権威主義 / 社会政策 |
Research Abstract |
本年度の研究では、ヨーロッパ近現代の自由主義に関する諸問題における本研究の意義を明確化するとともに先行研究の再整理を行うこと、刊行同時代史料などから対象とする政策・組織の概要を把握すること、非刊行一次史料の調査を開始して史料状況を確認すること、の3点を行い、成果はそれぞれ以下のとおりである。 1、本研究は社会政策と人種主義という観点から東中欧の自由主義(と反自由主義)を検討するものであり、まず東中欧の自由主義に関する論点に対しこの観点がどのように有益であるかを明確化しなくてはならない。そのため第一に東欧の自由主義的発展に関する研究史とそこにおける社会政策史の位置付けに関して整理し、この主題の意義と現在の研究課題を明確化した。ここでは、東欧では自由主義的発展の指標として社会政策が注目される一方で、これを反自由主義的な人種主義の問題と併せて論じなくてはならないという課題が明らかになった。また第二に戦間期ハンガリーの国民化政策における自由主義と反自由主義に関する検討も行った。後者に関しては研究会における発表を行ったが、前者に関する論考の刊行は2013年度前半になる見込みである。 2、本研究は上記の主題に取り組むにあたって、戦間期ハンガリーの「全国民衆家族保護基金」の活動を対象としている。本年度はこれを具体的に扱った先行研究および同基金の運営母体による出版物等を収集・検討し、留意すべき関連テーマ群(家族・女性教育など)と具体的に解明すべき政策実施組織(「社会監督局」:訳語は仮)に関して、次年度における研究を進めるための基礎的な知見を得た。 3、本研究の分析に使用する史料は主に、地方文書館の上記基金関連文書群であると予想されていたため、その史料状況を確認するための調査を行い、史料収集が困難または不可能な地域を特定したほか、史料の所蔵・分類について一定の基本的情報を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実施計画に記載した3点について、ほぼ実施できたため、「おおむね順調」と判断した。ただし、エゲル市のヘヴェシュ県文書館、ペーチ市のバラニャ県文書館について、重点を置くべき事例と想定していたが、両館とも当該史料群の収集が困難であることが明らかになったため、ブダペシュト市のブダペシュト市およびペシュト県文書館ほか数か所を中心に一次史料の探索対象を変更・限定し直す必要も出てきている。この点は次年度に持ち越される課題であり、本年度の反省点である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度以降はほぼ当初予定通り本研究における具体的事例にかかわる史料の調査・収集・分析をすすめることにより、「全国民衆家族保護基金」等の活動実態を具体的事例として、戦間期ハンガリーの在地社会における社会政策を東中欧社会の自由主義という論点に結び付けて検討する。また平成26年度はこれに加えて研究成果の発表準備を行う。ただし史料調査に関しては、平成24年度の研究の結果を踏まえ、当初想定していたバラニャ県文書館、ヘヴェシュ県文書館史料群からは期待できず、国立文書館のほかこれら2地方以外の「社会監督局」関連史料群から具体的事例の素材を抽出することになる(現在想定されるのはショモジ県文書館およびペシュト県文書館の当該史料群である)。この点が当初予定からの変更点となり、必要に応じてその他の地方における史料所蔵の可能性についても調査を継続する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度では、当初の想定と異なり2か所の地方文書館において史料状況が悪く、そこでの収集費用(複写・マイクロフィルム作成依頼費等館の規定によって詳細は異なる)分が未使用となった。平成25年度の研究費は、大半が史料調査のための旅費および史料収集・整理のための経費(マイクロフィルム等およびその作成依頼費用、資料・文献複写費、書籍、データ保存用機器等)にあてられるが、平成24年度に収集できなかった地方文書館史料の収集を平成25年度に追加的に行うため、その経費を平成25年度分として使用する。これらが設備備品費、消耗品費、外国旅費、人件費、その他の費目を大半を占める。このほか本研究の意義を東中欧近現代史に適切に位置付けるための議論を継続するため、国内研究集会に参加するための国内旅費を使用する。
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Research Products
(1 results)