2014 Fiscal Year Research-status Report
代理懐胎の人類学:英国における代理懐胎の実態と当事者の語りの研究
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24720388
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
島薗 洋介 大阪大学, グローバルコラボレーションセンター, 講師 (40621157)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 代理懐胎 / 医療人類学 / 生殖補助医療 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度は、代理懐胎やその他の第三者の関わる生殖補助医療に関する現地調査を英国で実施した。英国において、精子バンク、卵子バンク、代理懐胎を斡旋する団体のほか、養子縁組を支援する団体から聞き取りを行うとともに、不妊当事者やゲイ、レズビアンなどの性的マイノリティを対象としたイベントの参与観察を実施した。 英国では、営利目的での斡旋や金銭的対価を支払う商業的代理懐胎は法的に禁止されている。代理母と不妊当事者を仲介する非営利目的が活動しているが、国内で代理懐胎を行うのは基本的に困難な状況にある。そうした中で、米国やその他の国々に拠点をもつ仲介業者が英国内でも活動している。 平成26年度に実施した現地調査から、米国の生殖医療医療施設も、英国から顧客を得ようと宣伝活動を行っていることが明らかになった。さらに、養子縁組、精子提供、卵子提供、代理懐胎をつうじた家族形成についての当事者の体験談を紹介する雑誌が発行されたり、これらの家族形成のあり方に関心を抱く人々を対象としたイベントが開催されていることも明らかになった。こうしたことから、グローバル化のなかで、英国でも商業的代理懐胎は、事実上、新たな家族形成の一つのオプションとして受容されつつある実態がより明確に理解されることになった。 さらに、ゲイ、レズビアンなどの性的マイノリティの人々が生殖補助医療をとおした新たな家族形成の文化の生成に果たす重要な役割も明らかになった。かつての海外で代理懐胎等の技術を利用して親になった経験をもつ人々が、自ら生殖ツーリズムを仲介する業者となり活動しているケースもある。こうした現象には、生殖補助医療の商業化、人間の生殖能力の商品化と同時に、商業的に媒介された新たな親密性が出現しつつあることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初予定していた代理母へのインタビューを中心とした調査の実施には、さまざまな障害があることがこれまでの調査から分かった。同時に、英国においては、代理懐胎をはじめとした生殖補助医療の利用をつうじて、新たな家族形成の文化が出現しつつあることが現地調査で確認できた。そのために、平成27年度も調査を継続することが最善と判断し、研究計画を修正した。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の研究方法を変更したが、これまでの調査から英国の代理懐胎と家族形成について、他国との状況とも比較しながら、代理懐胎と家族形成の変容について、人類学的な視点から実証的研究を行うという方針に変更はない。調査の過程で新たに発見した問題についてさらに探求するため、平成27年度も現地調査を実施し、研究成果を発表する。
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Causes of Carryover |
当初予定していた代理母へのインタビューを中心とした調査の実施には、さまざまな障害があることがこれまでの調査から分かった。同時に、英国においては、代理懐胎をはじめとした生殖補助医療の利用をつうじて、新たな家族形成の文化が出現しつつあることが現地調査で確認できた。平成26年度中にフォローアップ調査を行うためだったが、調査対象者とのスケジュールの調整の都合から、平成27年度にフォローアップ調査を行うことが最善と判断し、研究計画を修正した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
前年度に新たに明らかになった課題について、継続して調査を実施するために使用する。180,000円を海外調査のための渡航費にあてる。
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Research Products
(3 results)