2013 Fiscal Year Research-status Report
沖縄のシャーマンによる「口寄せ」がグリーフワークに果たす役割に関する研究
Project/Area Number |
24720396
|
Research Institution | Musashi University |
Principal Investigator |
村山 絵美 武蔵大学, 人文学部, 講師 (60582046)
|
Keywords | 沖縄 / 民間巫者 / ユタ / シャーマニズム / 口寄せ / 喪 / グリーフワーク |
Research Abstract |
本研究は、沖縄のシャーマンであるユタの「口寄せ」に注目し、「死者の声」を聞くと観念される行為が、依頼者のグリーフワーク(喪失の悲嘆から立ち直るプロセス)に与える影響について検討することを目的としている。 本年度は、前年度に引き続き、ユタの「口寄せ」に関するフィールド調査と文献調査を並行して実施した。平成25年8、9月と平成26年2、3月にフィールド調査を実施し、ユタや依頼者へインタビューを行った。インタビューでは、「口寄せ」に関する情報だけでなく、ユタや依頼者が「口寄せ」に関与するまでのライフヒストリーを聞き取った。「口寄せ」とグリーフワークとの関わりを研究する上で、ユタや依頼者がどのような近親者の喪失体験を有しているかが重要になってくるため、複数のインフォーマントに対してライフヒストリー調査ができたのは貴重な成果といえる。 文献調査は、ユタの「口寄せ」の歴史的変遷を整理することを目的とするが、本年度は、前年度から調査を実施している沖縄県と都内の図書館を中心に調査を行った。沖縄県内の図書館(沖縄県立図書館郷土資料室、琉球大学付属図書館など)においては、フィールド調査の滞在期間中に文献を収集した。都内では、国会図書館を中心に調査を行った。前年度と本年度に文献調査で収集した資料は、デジタル化して分類を行った。資料を類型化し、整理することで、今後分析を進めるための基礎を整えることができた。 上記の調査研究を通して、民俗が喪において果たしてきた役割、ひいては遺族のグリーフケアにおいて民俗が果たしてきた役割を再検討することができた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の達成度は「やや遅れている」状況にある。その理由として、フィールド調査と文献調査はおおむね予定通り進んでいるが、成果のアウトプットが遅れていることが挙げられる。以下、具体的に述べる。 第一に、おおむね予定通りフィールド調査を実施することができた。本年度は、8、9月と2、3月に那覇市と糸満市を中心に現地調査を行った。具体的には、複数のユタとユタの依頼者にインタビューを行うことができた。前年度に引き続きインタビューを実施したユタや依頼者もおり、基本データだけでなく、「口寄せ」を行うまでのプロセスを把握することができた。また、地域における「口寄せ」の捉え方や「口寄せ」を行う背景について確認することができた。 第二に、文献調査もおおむね予定通り実施することができた。沖縄県内の図書館においては、上記のフィールド期間に併行して文献調査も実施した。具体的には、沖縄県立図書館郷土資料室、琉球大学付属図書館、糸満市立中央図書館、那覇市立図書館が挙げられる。沖縄滞在期間以外は、国会図書館を中心に、都内でも閲覧できるユタの「口寄せ」に関する資料の収集に努めた。 第三に、研究成果のアウトプットについてはやや遅れている。計画においては、研究成果を論考としてまとめる前段階として、所属先の学会で途中経過を発表する予定であったが、勤務先の業務と重なってしまい、報告することができなかった。次年度においては、本年度の遅れを取り戻すためにも成果を論考で発表していきたい。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究の今後の計画は、次年度が最終年度となるため、大別するとこれまでのフィールド調査・文献調査に加えて、研究成果報告の二つが挙げられる。以下、具体的な計画を二つに分けて記す。 第一は、一昨年度から継続してきたフィールド調査と文献調査の実施である。フィールド調査では、これまでにインタビューを実施してきたユタとユタの依頼者への追加調査を行うとともに、研究成果をまとめる際に使用してもよい事例など公開情報の範囲を確認する。また、論文をまとめて行く際に必要となる情報の最終確認も行う予定である。 文献調査では、これまで収集してきた事例をデータベース化・類型化し、研究成果のアウトプットに向けた基礎資料を作成する。本年度も基礎資料を作成しているが、修正や追加を加えて、より完成度の高い資料の作成を目指す。 第二は、これまでの調査における成果の報告である。具体的には、論文執筆が挙げられる。これまでの調査で得たデータを整理し、最終的な分析作業に取りかかる。現地での追加調査や最終確認を踏まえた上で論文を執筆し、専門誌へ投稿する予定である。 上記の計画を遂行することで、ユタの「口寄せ」をもとに民俗と喪との関わりを明らかにし、民俗知の現代医療への援用や遺族支援の在り方について再考する端緒を開きたい。
|