2013 Fiscal Year Annual Research Report
紛争の場におけるフェア・ユース―アメリカ著作権法理は実務で活かされているか
Project/Area Number |
24730008
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Research Institution | Setsunan University |
Principal Investigator |
家本 真実 摂南大学, 法学部, 准教授 (10411703)
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Keywords | 著作権 / フェア・ユース / アメリカ / 芸術 / アプロプリエーション |
Research Abstract |
平成24年度の研究において、他人の芸術作品を使用して新たな芸術作品を制作する「アプロプリエーション」という手法による作品がフェア・ユースであるといえるのかどうかが、アメリカ著作権法におけるフェア・ユースの今日的課題の1つとして浮上していることが判明した。そこで平成25年度は、「アプロプリエーション」で著名な芸術家の作品のフェア・ユースが裁判で争われているCariou事件について、その地方裁判所判決が著作権法務や芸術のコミュニティにどのような影響を及ぼしているのかを探ることとした。 そのような目的をもって平成25年度の研究を始めて間もなく、控訴審判決が出されたため、この控訴審判決と先の地裁判決とを比較することで、裁判所が芸術作品の使用に関してどのような判断をおこなっているのか、両判決における相違点はどのようなものか、それらに対して法曹や芸術のコミュニティでどのような評価がなされているのか、そして芸術家や彼らにアドバイスをおこなう法曹にとって、それらの判決が指針となり得るのかについて検討をおこなうこととした。結果的には、他人の芸術作品を使用して新たな作品を制作する際、どのような使用であればフェア・ユースとされ他人の著作権を侵害しないことになるのかにつき具体的な指針となるような判断はなされていないこと、そうした指針が形成されるには今後のさらなる判決の積み重ねが必要であるといえることが判明した。 この2年間の研究を通じて、アメリカで芸術作品に関するフェア・ユースが大きく取り上げられていること、司法と芸術のコミュニティとの間だけでなく芸術のコミュニティ内においても芸術作品やその制作に関する認識に差があり、それが芸術作品をめぐる著作権の裁判にも表れていること、裁判所が今後、芸術作品に関する裁判においてより具体的な指針を示すことが芸術の発展につながると考えられることを明らかにすることができた。
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Research Products
(1 results)