2012 Fiscal Year Research-status Report
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24730013
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
米田 雅宏 北海道大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 准教授 (00377376)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 公法学 / 警察法 / 行政組織 / 公私協働 / 警察公共の原則 / 安全 / 権力分立 |
Research Abstract |
1 ドイツ警察法を参照しつつ我が国の警察機関の任務配分を再考することで警察機関の機能に適合的な任務配分を明らかにすることを目的とした本研究では、初年度において日独警察機関の組織・権限法に関連する文献を収集するとともに、戦後内務省の権限がどのような背景の下で一般行政機関に移譲されたのかを警察関連立法の改正経緯の調査を通じて明らかにしようとした。より具体的には、警察機関は警察法二条一項が定める「責務」と二項が定める「限界」との関係において、果たしてまたどの程度行政機関の任務に関与することが許されるかを考察した。 2 研究調査の結果、我が国における戦後の警察改革が警察事務の市町村への移管や公安委員会制度の創設など、主として「警察の地方分権」に狙いを置き、また現行警察法に向けた論議においても警察に対する民主的な管理と能率的運営の達成や地方分権と国の関与という、どちらかというとマクロ的・垂直的権限配分に議論が集中したことから、行政機関と警察との権限分配というミクロ的・水平的権限配分への考察が不十分のままに終わったこと、つまり内務省の解体・脱警察化という政治的歴史的意味に関心が集まり、行政機関と警察機関の権限配分というドグマーティシュな意味を探求する視点が欠如していたことを明らかにした。 3 その上で、ドイツの戦後の脱警察化の歴史を調査し、水平的権限配分の視点から、各州における警察法の制定経緯並びに警察機関に認められている各種権限を明らかにするとともに、我が国の警察機関に付与されている権限との相違点などを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1 当初の計画では、研究初年度は研究計画の基礎を固める段階として、文献の収集並びに国内・国外の研究ネットワークの整備・構築を目標としていた。 (1)具体的には、まず日独警察機関の組織・権限法に関連する文献を収集すると同時に、ドイツの実務雑誌 Die Polizei(同雑誌は、主に警察実務家向けの雑誌ということもあって、各ラントの制度を踏まえた豊富な警察実例が紹介・分析されており本研究にとって有益である)の収集に取りかかった。この作業は現在も進行中である。 (2)また、ドイツ・フライブルク大学(D. Murswiek教授)での在外研究期間中に警察法研究者でもあるF. Schoch教授・R. Poscher教授・T. Wuertenberger教授(ともにFreiburg大学)にコンタクトをとり、他大学の警察法研究者や警察実務家へのヒアリング調査・関係資料の収集における助言を求めるなど、研究に要する人的ネットワークの整備も終えた。また国内においても、東北大学(稲葉馨教授)・九州大学(豊崎七絵教授)の研究者と共同討議を行うことでも一致している。 2 また研究の内容面に関して、我が国の警察法制定経緯の調査はほぼ終了し、現在は次の研究課題であるドイツ各州の警察法の調査・分析に着手している。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度に引続き日独警察組織・権限法に関連する文献を継続的に収集するとともに、研究計画をさらに展開させる年として、我が国の現行警察関連立法を悉皆的に調査し、警察以外の執行機関、一般(秩序)行政機関、司法機関、民間機関との関係において警察機関の任務配分を規定している要素を帰納的に抽出する作業に取り掛かる。この過程を通じて、警察機関の機能に適合的な任務の特徴を明らかにするとともに、さらに、秩序維持の効率性向上と警察権力の統制という両視点から、警察機関と他の国家機関等の分離の必要性ないし連携の可能性を具体的な実例を素材として検証する。具体的素材としては、環境省との連携、児童虐待防止法における福祉協議会や裁判所との連携、公共施設などにおける警備業者との共同パトロールを取り上げる予定である。 もっとも、上記課題の中で、特に警察以外の執行機関(海上保安庁・自衛隊等)との関係を検討する際、我が国の領海警備や国防上の法制度が未だ十分に整備されていないことに鑑み、研究の進捗状況によっては、執行機関としての特徴を踏まえた最低限の考察にとどめ、逆に、近時日独双方において特に注目されている民間機関との連携について(総論的な研究は既に先行して行っていることにも鑑み)、重点的に考察することにしたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度は、概ね当初の予定通りに予算執行を行うことができた。僅かに残った経費は、次年度が本研究課題を本格的に展開させる重要な年であることに鑑み、効率的使用を行った結果である。この分は、想定以上に多くの資料が存在することが判明した「情報法」に関する文献の購入・複写と、社会学の分野において特に多く存在することが判明した「警察機関と行政機関の連携に関する事例研究」の調査経費として、また今年度までに収集した膨大な資料を整理するため、整理分類用のファイルの購入費用として使用する予定である。
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