2012 Fiscal Year Research-status Report
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24730023
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
木村 草太 首都大学東京, 社会(科)学研究科, 准教授 (50361457)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 憲法 / 平等権 / 平等原則 |
Research Abstract |
本年は、まず、平等原則について基礎研究を進めた。平等原則は、統治機構上も重要な原則であり、法学教室の統治機構論に関する連載において、平等原則に従った統治についても考察を行った。そもそも平等とは、人格の平等を意味し、人格の概念を正確に把握しない限り、理解できない概念である。人格については、仮想の帰属点ととらえる見解と、認識主体が到達し得ない論理的措定と見る見解があり、本年は、前者の見解から研究を行った。これを踏まえると、執政において正統性を確保する手法ためには、必然的に平等原則への配慮がなければならないことが分かる。こうした観点から、一票の格差問題についても考察を行った。 平等権についても、基礎研究を進め、従来の研究をもとりまとめた「平等権」と題する原稿を執筆した。平成25年度中に、日本評論社から出版される予定である。この原稿では、平等権の歴史、平等権に関する判例の歴史を日米独と比較するものであり、ここから日本法に含まれる深刻な問題を指摘している。 これに加え、本年は、法というものが本質的に有している平等への志向について考察を深めるとともに、一票の格差問題の核心についても研究を行った。一票格差問題は、結局のところ、投票価値の均衡が、なぜ優れた国会議員を選出することにつながるかを説明できなければ、解答の仕様がない。この点についての考察は決して多くない中、幾つかの新しい視点を導入し、一票の格差問題の原理論を考察した。平成25年度冒頭に、出版される単著において、その研究成果が発表される予定である。 その他、判例・文献の読解の他、平等原則に関する訴訟に携わった実務経験者との意見交換を複数回行った。また、その場で、現在の研究に関する実務家の視点からの重要な示唆を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年は、ドイツ法に関する基礎研究を行う計画で、その計画におおむね沿った形で「平等権」の原稿を書き上げた。この原稿の内容は、アメリカの判例と対比しながら、ドイツ法の歴史も総論的に説明しており、今後の研究の指針となっている。その中では、国籍法違憲判決や非嫡出子相続分など、近時問題となっている判例についても深く検討を加えており、比較法から日本法への示唆を導くという研究計画の趣旨にそった原稿になっている。 また、統治機構法の研究や、公務員の政治活動規制についても平等権・平等原則からの検討が可能であることを発見し、その分野についても研究・執筆を進めた。その成果は法学教室の連載や、法律時報の原稿に結実している。この点は、冬の研究会での石川教授からの専門的知識提供からも大きな示唆を得ることができた。また、公務員の政治活動や国旗国歌訴訟における平等原則からの検討については、夏の研究会での蟻川教授からの示唆を活かし、論文として公表している。 近年大きな問題となっている投票価値の均衡についても、従来多かった訴訟技術的な検討とは異なる根本的・原理的考察を行うことができ、思わぬ文献が重大な示唆を持つことを幾つか発見している。 このように、従来の研究に加え、さらに視野を広げた研究を行っている点で、研究計画以上の研究の進展があると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究としては、本年の研究方法を継続する予定である。基本的には内外の文献にあたり、平等権・平等原則に関する検討を深める。具体的には、本研究の主目的であり米独の判例研究を継続し、また、特にそこに示された原理論への考察も行う予定である。 また、平等権・平等原則は射程が広く、従来、表現の自由や営業の自由の問題とされた諸領域でも、平等権・平等原則からの検討が有効な場面は少なくない。あるいは、地方自治・地方公共団体における団体間平等や国家地方関係など、統治機構分野にも、こうした検討が有益な場面があり、そうした点にも視野を広げ研究を進める予定である。 今後も、論文集の発表、論文の発表、著書の刊行、学会報告などを通じ、研究成果を広いアクセスに置けるようにするとともに、官公庁・法律実務家とも意見交換を行い、幅広く研究成果の社会還元を行っていく予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究費の使途としては、文献読解・収集のための書籍費用、専門研究者から知識の提供を受けるための謝金等、学会出席・文献収集のための旅費などに利用する。 収集する文献としては、内外で出版された関連書籍の他、法学専門論文以外に参照すべき社会学・政治思想などに関する文献をも収集する予定である。また、判例集・ケースブックなども研究のために非常に有益であり、利用する。 判例情報については、地方裁判所で訴訟用の資料にアクセスすることも多く、そのために旅費を使うことも考えている。また、資料の整理のために、老朽化したPCを更新する予定もある。また、判例については、オンライン情報にアクセスし、プリントアウトして利用する場合もあるため、印刷機に関する費用も支出する可能性がある。 また、研究のために著名研究者と意見を交換する研究会の開催が有益であり、年に2回程度を予定している。 来年度以降に大きな学会報告、研究論文発表が予定されており、それにそなえるため、研究費を繰り越した。
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Research Products
(13 results)