2014 Fiscal Year Research-status Report
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24730028
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Research Institution | Senshu University |
Principal Investigator |
榎 透 専修大学, 法学部, 教授 (90346841)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 人権規定の私人間効力 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度は、前年度に引き続き、人権規定の私人間効力論に関する重要論点の中から、以下の具体的な2つの点を考察し、その上で、私人間効力論の理論的・実際的有用性という点から、私人間効力論に関する申請者自身の見解をまとめる準備を進めた。 1.憲法の最高法規性から私人間の問題に対して憲法の適用を考える学説については、平成25年度に引き続き検討を行い、日米の平等に関する具体的事案を踏まえて、憲法の最高法規性から導き出せる範囲を確認した。 2.私人間効力論と統治機構・私的自治との関係については、私人間効力論に関する諸学説の議論の応酬を分析し、私人間効力論で示された種々の見解の分岐点ともいえる、各学説が想定する憲法の役割や憲法規範の特質について検討した。そして、憲法規範に求める特質や役割の違いによって、私人間効力論と民主主義との関係、裁判所の役割、市民社会・私的自治観について、どのような理解の違いをもたらしたのかを確認した。この点は、とりわけ憲法観と民主主義・自由・憲法改正との関係という論点を絡めながら、ハワイ大学ロー・スクールの研究会で、“What is the Constitutional Law? : Introducing the Dispute about the Revision of the Constitution of Japan”というタイトルで報告した。ただし、ドイツの国の保護義務論を踏まえて日本の私人間効力論を説明する学説については、ほとんど検討できなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成26年度はアメリカ合衆国ハワイ大学で在外研究を行ったため、文献のアクセスという点で若干の不都合が生じ、同年度中に実施の予定だった、ドイツ法を踏まえた日本の私人間効力論に関する憲法学説の分析、すなわち、国の保護義務論に対する評価や、憲法上の人権規定を全法秩序の基本原則と理解することの意義と問題点については、十分な検討ができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度は、研究計画にありながら研究が十分に進展していない、国の保護義務論の評価、憲法上の人権規定を全法秩序の基本原則と理解することの意義と問題点、憲法上の人権と自然権の関係について考察し、その上で「憲法学における私人間効力論の包括的考察(仮)」というタイトルで活字論文にまとめる予定である。
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Causes of Carryover |
平成26年度は、私人間効力論において、ドイツの議論を日本に生かそうとする学説を考察しつつ、日本の私人間効力論について最終的にまとめる予定であった。しかし、アメリカ合衆国において在外研究を行っていることから、私人間効力論に関するアメリカ法の現況を摂取できたものの、日本とドイツの議論を論じる文献のアクセスに不都合が生じ、また、これを踏まえた成果の発表を次年度に回さざるを得なくなったため、平成26年度に未使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度は、私人間効力論に関する日本とドイツの議論を論じる文献や資料を補充的に収集し、その上で、これまでの成果をまとめることとする。このため、未使用額は、私人間効力論に関する日本とドイツの議論を論じた文献・資料の購入費、研究成果発表のための国内旅費、成果を記した論文の印刷費、その成果を送付するための通信費、成果発表のためのホームページ作成に充てることにしたい。
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Research Products
(1 results)