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2012 Fiscal Year Research-status Report

国家の成立・変動の司法的コントロール―政治的紛争概念の再評価―

Research Project

Project/Area Number 24730035
Research InstitutionChiba University

Principal Investigator

藤澤 巌  千葉大学, 人文社会科学研究科(系), 准教授 (20375603)

Project Period (FY) 2012-04-01 – 2014-03-31
Keywords国際法 / 国家 / 国際司法裁判所
Research Abstract

平成24年度は、国家の成立・変動に関する国際判例を調査検討した。研究の効率性を高める工夫として、国際判例の検討においては、国際司法裁判所(ICJ)およびその前身である常設国際司法裁判所(PCIJ)の裁判例を中心に検討した。ICJは国際連合の主要な司法機関として国際社会のもっとも代表的な司法裁判所であると同時に、国連の主要な機関の一つとして安全保障理事会や総会といった他の主要機関との権限関係をもっとも先鋭に意識せざるをえない。このような性格上、とくに政治的機関によるコントロールとの権限配分が問題となる国家の成立・変動については、ICJの実践をなにより優先して解明する必要がある。具体的には、PCIJにおけるドイツ・オーストリア関税同盟事件、ICJにおける最新の事例としてコソボの独立宣言に関する勧告的意見を分析した。
ドイツ・オーストリア関税同盟事件の検討からは、PCIJの多数意見と反対意見の対立点が、国家は国際法上により定義される国際法上の制度なのか、それとも国際法の外部にありその前提となる事実なのか、という点にあり、さらに後者の場合、本件の論点であった将来における国家の独立への危険について、司法機関としての裁判所が判断すべき問題であるのか、政治的機関である国際連盟理事会による判断が適切かという点にあったことが明らかになった。
コソボ勧告的意見では、コソボの独立宣言が国際法に違反したか否かは「法律的問題」であるとして裁判所は管轄権を肯定したが、実際には当該問題については安保理や事務総長特別代表など、政治的機関の判断に大幅に依拠しており、自己固有の判断は回避しているとみることができた。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

本研究では、コソボ問題などに示されるように近年その重要性を増している、国家の成立・変動に関わる紛争・問題について、その司法的コントロールの限界を検証する。具体的には(1)国家の成立・変動の判断について、国際司法裁判所(ICJ)は、その裁判実践において、自己独自の判断を抑制し、他の機関・主体の判断、とりわけ安全保障理事会や総会などの政治的機関の判断を尊重する傾向があることを実証的に示し、(2)この裁判所の姿勢は、司法判断適合性の限定に関する「政治的紛争」論とくに「重大利益説」の再構成によって解明できることを明らかにすることを目的としている。
これまでの研究においては上記(1)の点について、ICJおよびその前身であるPCIJという国際社会の中心的な司法機関において、国家の成立や消滅を禁止する国際法規範の解釈適用が主題となった場合に、自己の管轄権行使を否定して門前払いすることはないが、他方で、当該主題を裁判所がくまなく判断するべきか否かについては、慎重な態度を示していることを明らかにすることができた。

Strategy for Future Research Activity

平成25年度においては、司法的コントロールの限界に関する学説を理論的に検討する。学説の理論的分析においては、「重大利益説」を素材とし、とくにその理論的到達点といえる戦間期のモーゲンソーの理論を中心に検討する。彼の議論は従来、「政治的紛争」を国際法の変更を求める動的紛争として捉えるものと理解されてきた事実がある。
しかし、彼の議論を精査すると、彼が「政治」を国家そのものに密接に関連する事象として定義し、なかでも「国家の存立自体を最も政治的な事象と捉えていることがわかる。つまりモーゲンソーの政治的紛争論は、いわゆる「重大利益説」の理論的到達点として「国家の存立自体」を政治概念の中心に据える理論と解釈することができる。本研究の対象である国家の形成・変動の問題はまさに「国家の存立自体」の問題である。
したがって、モーゲンソーの政治的紛争論は、国家の形成・変動の司法判断適合性の解明にとって決定的な意義をもつ議論として、理論的検討に値すると考えられる。とりわけモーゲンソーの理論は、理論的には、ラウターパクトに代表される否定論に対抗する、「政治的紛争」概念による司法判断適合性限定論の代表的学説として、日本の国際法学を含め学説に大きな影響を与えており、その検討は本研究を進捗させる上で最も有望だと考えられる。

Expenditure Plans for the Next FY Research Funding

平成24年度においてはほぼ予定通りに研究費が使用され308円が次年度使用額として残った。平成25年度においては、司法的コントロールの限界に関する学説を理論的に検討するために、具体的には、モーゲンソーの議論の学問的文脈をなすシュミットやビルフィンガー、ラウターパクトなど戦間期の諸学説および現代における理論的展開を検討する必要があり、そのための書籍購入に、研究費30万円程度を使用する予定である。
また、モーゲンソーの理論の検討には、、米国議会図書館所蔵のモーゲンソーの未公刊文書をも参照してその理論の全貌を明らかにする必要があるので、研究費40万円を米国議会図書館における調査のために使用する計画である。
以上の判例分析と理論分析を完遂したうえで、最後に両者を突き合わせ、当該理論が、国家の成立・変動に関する国際裁判実践を理論的に説明できるものであることを示したい。

  • Research Products

    (1 results)

All 2013

All Journal Article (1 results)

  • [Journal Article] 国際責任法上の行為帰属論の問題枠組としての国家と社会の関係2013

    • Author(s)
      藤澤巌
    • Journal Title

      千葉大学法学論集

      Volume: 27巻4号 Pages: 95-155

URL: 

Published: 2014-07-24  

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