2013 Fiscal Year Research-status Report
組織犯罪対策に求められる国際社会の協力とわが国の刑事司法
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24730053
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
宮木 康博 名古屋大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 准教授 (50453858)
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Keywords | 身分秘匿捜査 / おとり捜査 / 罠の法理 / 組織犯罪 |
Research Abstract |
2013年度は、「組織犯罪対策に求められる国際社会の協力とわが国の刑事司法」における検討課題のうち、グローバルな犯罪への対処として必要とされる国際社会の協力の1つの前提となるであろう問題設定および問題状況の捉え方を検証すべく、そのルーツを辿る作業を行った。 研究計画の上では、身分秘匿捜査を中心に研究を進めつつ、おとり捜査のまとめを公表していく予定であったが、その検討段階において、おとり捜査や身分秘匿捜査において用いられる手法に各国で若干の広狭があるが、そのことを前提としてもなお、法的効果の点により明確な特色が見て取れる点があり、その点を確認しておく必要性を感じるにいたった。また、そのような法的効果の違いは、同手法に対する根本的な考え方の相違に基づく面もあるのではないかと思い至ったのである。この点の確認は、次年度に最終年を迎える本研究にとって、重要なポイントであると思われる。 この点に関する研究成果の1つとして、おとり捜査における罠の法理のルーツを調べた内容を2014年3月に「罠の法理の史的変遷とおとり捜査論議の問題関心」名古屋大学法政論集255号(2014)651-686頁を公表した。ただし、罠の法理がわが国のおとり捜査論議の中でどのように参照され、変容をしてきたのかは、今後の課題である。 また、同時並行的に進めている身分秘匿捜査の調査も、当初見越していた理論的課題にとどまらず、たとえば、イギリスでは、実践の方法およびあり方に関する研究も散見されるにいたっている。この点は、未だ公表できる段階にいたっていないが、実践に結びつける理論構成の構築のためにも、次年度の中心的課題として取り組む必要があると考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ボーダレスな組織犯罪対策として、研究目的に掲げた身分秘匿捜査(おとり捜査)については、未だ公表に至っていないものとして、コントロールド・デリバリーがある。ただし、身分秘匿捜査の調査過程で、この点についても文献収集および整理は着実に進んでおり、最終年となる次年度に向けた過程としては、概ね順調であると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の予定とおり、身分秘匿捜査を中心に比較法的知見を整理検討する。とくに、イギリスでは、理論的検討にとどまらず、実践にも研究の目が向けられており、わが国の検討に際してもこの点は有益だと考えている。また、残された組織犯罪対策手法を概観するとともに、おとり捜査のまとめを行う予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度の最終段階である1月末から3月末にかけて体調不良があり、研究出張の取りやめなどによって予定していた予算執行処理ができなかった。 生じた額については、基本的に、改めて研究出張の機会を得て消化させていただく予定である。
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