2014 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
24730075
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
橋口 賢一 富山大学, 経済学部, 准教授 (40361943)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 過失 / 医療過誤 / 連携 |
Outline of Annual Research Achievements |
最終年度は,医師と医師,医師と他の医療スタッフの連携に係る法的取扱いに関する継続調査を行った。連携は医療水準に適う医療提供のために重要な機能を果たし,キーパーソンとなるのがチーム医療の責任者及び病院開設者である。前者には,水平的・垂直的分業の区分,各々の専門性(看護師等の医療スタッフの場合は,法規定による業務範囲の尊重も含む)に配慮し,連携を十分になしうる組織たるチームの構築が求められ(訴訟では,連携を阻害するコミュニケーション不足が追及されることが多い),後者には連携を十分になしうる組織化に向けたより高次な質の管理,具体的には,十分な人員配置・施設整備が求められる(入院患者のベッド転落事故につき,病院独自の定める基準に照らし,この観点から病院開設者自身の義務を認める裁判例が散見される)。 研究期間全体の成果は次のように纏め得る。現代医療はチーム医療という形態で実施されることが一般的で,この形態特有の医療事故も発生しており,協働の実態を取り込んだ責任論を展開する必要がある(ドイツのBGBに設けられた診療契約の規定でも,こうした実態を踏まえたものが存する)。これを可能にする有用概念が組織過失である。右概念を通じて,代表者によってチームの実態を踏まえた組織編成が十分になされているか,病院設置者によって法規定等の要求する基準を遵守した病院全体の組織化が十分に実施されているかを判断することで,連携を取り込んだ責任論が展開できるのである。そしてこうした議論は,病院と他の病院等との連携にも敷衍可能である(従来から複数の病院間での情報伝達の不備が「転送義務違反」として追及されることも多く,上記議論と統一的に論じうるものである)。最判平成20年4月24日の出現,病院自身の義務に関する規定を別途置くべきとする近時の診療契約に関する提言を見れば,組織過失論を展開する機運は高まっているといえる。
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