2013 Fiscal Year Research-status Report
競争的権威主義体制における財政政策の研究:アジア通貨危機後のマレーシアを事例に
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24730123
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Research Institution | Fukuoka Women's University |
Principal Investigator |
鈴木 絢女 福岡女子大学, 文理学部, 講師 (60610227)
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Keywords | マレーシア / 財政政策 |
Research Abstract |
平成25年度は、今日のマレーシア政治における財政問題の争点化について地域研究的な手法でまとめることを重視した。ただし、選挙が行われ、政治家との接触が難しい時期だったこともあり、本研究課題の目的での出張は控えねばならなかった。 5月行われたマレーシア総選挙では、国営企業・政府系企業の経営状態や中央政府によるインフラ事業への政府支出に加えて、アジア通貨危機以降増加し続ける財政赤字が、政治の自由化や汚職問題と並んで大きな争点の一つであった。政府による財の分配プロセスが、政府・与党・与党の支持基盤に極端に偏ることが是認される「開発志向国家」パラダイムから、国民が国家財政のあり方をつぶさに観察し、「公共投資の私的利用」を争点として与党を糾弾する、いわば「財政イシューの民主化」ともいうべき転換が起こりつつある様子が明らかになった。知見の一部はSuzuki (2013)にも盛り込んだ。 また、「開発志向国家」から「福祉国家」への転換という目標に向けて行われた社会保障・雇用保障改革にも注目した。「入口」としては、物品・サービズ税の導入が決定するなどの改革があったものの、賃金抑圧を選好する企業からの圧力のために、予定されていた失業保険の導入は頓挫し、「出口」には大きな変化はなかった。さらに、選挙の結果として、公共事業に依存していたグループの発言力が強まり、政府事業に対する公共支出の構造改革も全く進まなかった。他方で、広く国民一般に影響する補助金の削減だけが進むという状況が進展するなかで、納税者の「不公平感」が高まっており、各地で物品・サービス税の導入に反対する運動が続いている。入口・出口については、鈴木(2013)、(2014)にまとめた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
一昨年から何度も実施が噂されていた総選挙がようやく2013年5月に実施された。その後約3ヶ月間は、選挙の公正性などをめぐり国内が動揺していたこともあり、25年度はめまぐるしく変化する情勢を理解することに多くの時間を費やす事になった。他方で、その結果として、財政問題の今日的な意義を理解することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、昨年度に予定されていながら実施できなかった実地調査を行う。 特に、これまでほとんど情報を集めることができなかった国営・政府系企業や与党系のビジネスマンとの接触を試みる。 財政という切り口から見た競争的権威主義体制研究は、これまで皆無であるので、成果はできるだけ早く出版する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
マレーシアの総選挙実施が、本研究計画時の予測よりも1年半以上遅れたことから、議員を含むリソースパーソンへの聞き取りを中心とするフィールドワークが予定通り実施できなかった。本来夏期休暇中に実施を予定していたフィールドワークを後期終了後(2-3月)に行うことも考慮したが、研究代表者の大学移籍準備のために、時間をとることができなかった。 約60%をマレーシアでのフィールドワークおよびJETROアジア経済研究所での調査に、残りの20%を人件費、残り20%を消耗品に充てる。
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Research Products
(7 results)
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[Presentation] マレーシア
Author(s)
鈴木絢女
Organizer
アジア経済研究所 動向年報50周年記念事業
Place of Presentation
JETROアジア経済研究所
Invited