2013 Fiscal Year Research-status Report
グローバル・ジャスティス運動が世界政治に与える影響に関する研究
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24730151
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Research Institution | Takachiho University |
Principal Investigator |
五野井 郁夫 高千穂大学, 経営学部, 准教授 (50586310)
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Keywords | グローバル・ジャスティス運動 / 直接民主主義 / グローバル市民社会 / 国際規範 / サイバー・スペース / 群れの政治 / 類縁集団 / 社会運動のクラウド化 |
Research Abstract |
25年度は、これまでの労働集約型で階級による古典的社会運動やA. メルッチやA. トゥレーヌらの「新しい社会運動」とも異なる、C. Mouffe, “Artistic Activism and Agonistic Spaces”(2007)やN. Klein, No Logo, new ed.(2009)に散発的に見られた、ダンスやサウンドシステム、仮装や広義の芸術表現といったシャリバリに近い現在の規範変容的文化からなる「ポスト-新しい社会運動」(S. Hall, 1999)とも呼ぶべき現象のグローバルな展開について、現在の世界的潮流を鳥瞰するとともに、実際の現場での定点的な参与観測を通じて、理論化を本格的に行った。 とくに今年度の実績は、これまでのKriesi, D. Della Porta & D. Rucht eds, Social Movements in a Globalising World (2009)等では不十分であった国境横断的な運動の主体にかんする記述や、既存の国際関係研究では「グローバル・ジャスティス運動=NGOやグローバル市民社会」と一般に流布している定式とは異なる政治主体として、類縁集団らによる国境を越えた連帯と運動のフォーマットの伝播を明らかに出来たことである。 また、過去の日本と世界の社会運動の系譜をたどることで、現代の社会運動論との連続性を見出すとともに、グローバル・ジャスティス運動の生成と規範のカスケードによる伝播と定着が、たんにリアルな条里空間という場のみならず、サイバー・スペースという平滑的・象徴的な場において主体化し媒介となっている現象についての分析を行った。これら本年度の研究実績は論文や学会報告、書籍等で発表することに成功し、当初の研究計画以上の成果を上げることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成25年度も当初の計画以上に研究が進展した。海外での学会報告が出来たのみならず、雑誌への査読も含む論文投稿や書籍への論文掲載も叶い、研究計画で示した研究内容を広く江湖に問うことが出来た。投稿した英文雑誌の査読を通過し、26年度に掲載予定である。 並行して引き続き類縁集団の動態把握のための資料収集とフィールドワークを行い、日本の脱原発運動のレパートリー分析に成功するとともに、海外でネオナチなどのファシズムの復活やヘイトスピーチ、ヘイトクライム等のいわゆる右傾化に対抗してなされている草の根のアンティファ(ANTIFA:Anti-facism)運動やLGBT運動の国内外での連環とフォーマットの伝播と議会政治への影響力行使に関する動態把握も成功した。 なお、グローバル・ジャスティス運動の日本への伝播の例として、日本の脱原発運動における組織の脱中心的な傾向を明らかにするとともに、日本での排外主義やヘイトスピーチの蔓延に対抗する反レイシズムのカウンター運動の生成とレパートリーの獲得、文化的な宣伝手法の洗練などを分析することができた。それらの分析にかんする研究成果の一部いんついても、国際学会と国内学会での研究発表、投稿論文、ウォールストリートジャーナルやNHKなどの国内外メディアや全国紙の新聞論説への寄稿など順次公表し、社会への還元も行うことが出来た。 なお分析に使用した「ヘイトスピーチ」という語彙が、2013年度の現代用語の基礎知識でトップテンに選出され、申請者が受賞した。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年である平成26年度は、過去2年間の一次資料の収集と分析に基づく理論化によって提示した理論の検証を行うとともに、追加的な資料が必要となる場合には、前期に収集し、後期には理論の検証と、歴史分析の結果に基づいた修正などに充てる。これら理論・実証研究の成果はすでに24-25年度で多くの国内外の学会で報告を行っているが、さらに26-27年度中にも国内または国外の研究会・学会において報告や査読論文として公表することを目的としたい。 くわえて、グローバル・ジャスティス運動における参加者らが結節するために使用するシンボル面の表出を分析するために、引き続き類縁集団の動態把握のための史料収集と各主要都市での動向や国際展等での世論形成、規範浸透についてもフィールドワークを行うとともに、国内外の研究者ネットワークの維持とさらなる構築ならびに定点観測にもつとめる。 とりわけ、本研究のなかで理論的に可視化されてきた、世界中のインターネット等を媒介として結びついた人々によるグローバル・ジャスティス運動を通じた世界政治への参与にかんする研究を行うべく、ひきつづき海外の主要研究者たちとの連携・相互交流を深めるのにくわえて、オキュパイ運動等のもとになったスペイン15M運動の理論的基盤を形成したバルセロナ大学講師のレオニダス・マルティンらと連携して研究をさらに進めていく予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
購入予定の物品の発売ならびに書籍と史料の刊行が遅れたため、使用を見送らざるを得なかった。 次年度が1年目の24年度、25年度に対して予算額が少ないため、使用差額を次年度の使用計画にて補強的に使用する。
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Research Products
(12 results)