2013 Fiscal Year Research-status Report
アメリカにおける現代オーストリア学派の史的発展に関する研究
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24730184
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
吉野 裕介 京都大学, 文学研究科, 研究員 (00611302)
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Keywords | ハイエク / 新自由主義 / アメリカ / 経済思想 / 自由 / オーストリア学派 |
Research Abstract |
本年度は本計画の二年目であったが,これまでの集大成と言える成果が得られた,もっとも実り多い一年であった。 まず,2013年7月には,これまで何度かトライしたがリジェクトされてきた国内の学会誌にようやく掲載された。この成果は,筆者の研究アプローチ-思想の普及や受容-と,アメリカにおける経済思想史的な考察を磨き上げるうえできわめて重要な論文となった。次に,2014年3月に,政治思想や法哲学など他分野も含めた研究者と協働し,ハイエクに関する研究書を作り上げるプロジェクトに関わらせてもらい,一章を寄稿した。こうした経験は,専門である経済思想分野との議論から得られる示唆とはまた異なり,筆者の研究を豊穣なものにすることを助けた。最後に,2014年3月には,二〇〇七年に京都大学に提出した博士論文を大幅に加筆修正し,勁草書房より著作『ハイエクの経済思想:自由な社会の未来像』として刊行することができた。この単著は,自身のはじめての著作であるだけでなく,自由な社会の未来像を構想するという,歴史研究から現代社会論へと発展させる広い射程をもった考察を試みることができた。 もちろん,ここで得られた成果は,一年間ですぐに結果に結びついたのではなく,それまでの資料収集,学会参加,多くの研究者との議論や,一般の人々への成果公開とそこからのフィードバックなどがあってこそである。こうしたことを踏まえつつ,来年度はさらに今年の進展を考慮したペース,内容での計画を実行する準備がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
国内査読付き雑誌,共編著,そして単著と,目指していた業績をきちんと公表できたことは,望外の進展であったとい言える。当初は,この科研費計画のうちに書籍化することを目指していた単著についても二年目に書籍化できたことは,三年目および今後の研究の進展を大いに加速させることができるだろう。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで書いてきたように,今年度はこれまででもっとも業績が公表された一年であったが,すべての業績は国内向けの日本語で書かれたものであった。今後は,当初の計画に掲げたように,成果を英語化し,国際的にもインパクトを持つ研究を生み出すべく活動する必要がある。このためには,まずは英語圏での議論の水準にキャッチアップするための資料と研究環境の整備と,そののちの論文の英語化が急務とされる。
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