2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24730210
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
|
Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
平尾 智隆 愛媛大学, 教育・学生支援機構, 講師 (30403851)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | 教育過剰 / 生産性 / 人的資本 / 高学歴化 |
Research Abstract |
本研究の目的は,労働市場における教育過剰の把握(学歴に見合った仕事をしているか否か)と,それが生産性に与える影響を計測し,生産性を高める労働政策・人事労務管理と高学歴者のキャリア形成への示唆を探ることを目的としている。平成24年度の研究実績の概要は次の通りである。 (1)内部労働市場における教育過剰の把握:研究協力者である松繁寿和氏(大阪大学教授),梅崎修氏(法政大学准教授),井川静恵氏(帝塚山大学准教授)と研究会を開催し,企業の従業員調査の準備・実施を行った(Z社)。また,研究代表者(平尾)のフィールド開拓により,当初予定していた企業以外での従業員調査が可能になり,調査を実施した(E社)。2つの企業調査から得られた個票データを整理し,平成25年度以降,学会発表等のかたちで成果を発表する準備を進めている。また,これらの調査は次年度以降も実施し,データのパネル化を行う予定である。企業内部における教育過剰の把握は,日本ではほとんど行われていない。諸外国の先行研究から学歴ミスマッチは生産性を減じることが明らかにされており,その把握は日本企業の再生において人的資源管理の側面から重要な意味を持つ。 (2)外部労働市場における教育過剰の把握:研究代表者の平尾と研究協力者の松繁氏は,内閣経済社会総合研究所(ESRI)および独立行政法人経済産業研究所(RIETI)と協力し,統計法33条に基づき,就業構造基本調査の個票データの申請を行い,データの提供を受けた。日本の労働市場における教育過剰を大規模な公的統計のデータを使って計測した研究はなく,現在分析中である。平成25年度以降に,学会発表および学術論文のかたちで成果を公表する準備を進めている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究の現在までの達成度については,おおむね順調に進展していると判断している。その理由は次の通りである。 (1)研究計画通り,研究協力者である松繁寿和氏(大阪大学教授),梅崎修氏(法政大学准教授),井川静恵氏(帝塚山大学准教授)と協力し,企業の従業員調査(Z社第1次調査)を実施した。平成25年度(Z社第2次調査),26年度(Z社第3次調査)についても調査を実施する予定である。調査対象企業との関係も良好である。平成25年度の第2次調査については,すでに平成24年度後半に実施に向けて協議・準備をはじめている。 (2)当初の想定以外に,フィールド開拓により新たにE社の従業員調査が可能になり,調査を実施した。当初の調査対象企業(Z社)の調査では得られないデータを得られたこともあり,当初の研究計画の限界を補完する研究が実施できる見込みになっている。ただし,この点は研究計画以上の進展であり,次年度以降の予算執行のあり方を見直す必要性が生じた。 (3)研究開始初年度において,1つの論文(査読付き)の公表,2回の学会発表(全国大会)を実施しており,研究成果の発表も順調に行えている。
|
Strategy for Future Research Activity |
(1)【研究実績の概要】【現在までの達成度】でも述べた通り,2企業の従業員調査から得られた個票データを用い,教育過剰が生産性に与える影響の分析を進める。 (2)現時点では,得られたデータはクロスセクションデータであるため,その限界を乗り越えるために第2次調査(平成25年度),第3次調査(平成26年度)を実施して,データのパネル化をはかる。教育過剰状態は,主観的にも客観的にも担当業務の変更や異動,転職等によってその状態が変化する一時的なものである可能性もあり,その意味で,同一個人を多時点で追うパネルデータによる分析が必要になってくる。 (3)本研究課題と関わる比較研究を進めるため,内閣経済社会総合研究所(ESRI)および独立行政法人経済産業研究所(RIETI)と協力し,大規模アンケート調査の実施や政府統計の個票申請を通じて外部労働市場における教育過剰についての研究も進める。労働市場全体の問題としての教育過剰と一企業内の人的資源管理の問題としての教育過剰について,その要因や影響の違いを比較検討していく予定である。なお,RIETIにおいては平成25~26年年度の2年間,教育の生産性を計測する研究プロジェクトの実施が決定しており,協力体制が築けている。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
「次年度使用額」が発生した大きな理由は,平成25年度に実施する調査において,打合せ等に要する旅費の増大が予想されることにより平成24年度において物品購入を抑制したためである。 【研究実績の概要】等でも述べた通り,平成25年度は当初1社であった企業調査の予定が2社に増える見込みである。また,平成25年度からデータのパネル化をはじめるため,調査実施と取りまとめについて,初年度の平成24年度以上に綿密な打合せが必要になることが予想される。すなわち,出張回数の増加が予想されている。また,データセットの作成・整理についても,平成25年度はパネルデータ作成による複雑化が予想され,学生アルバイト等の謝金の増大が予想されている。 このため,大規模データを分析するために購入予定であったコンピュータについて,予定のものよりも安価なコンピュータを購入することで対処することにした。 「次年度使用額」は,増加する調査に対する出張旅費,複雑化するデータセット作成のための謝金,質問紙の印刷代等として,使用する予定である。
|
Research Products
(3 results)