2013 Fiscal Year Research-status Report
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24730210
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
平尾 智隆 愛媛大学, 教育・学生支援機構, 講師 (30403851)
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Keywords | 教育過剰 / 学歴ミスマッチ / 人的資本 / 高学歴社会 |
Research Abstract |
本研究では,労働市場における教育過剰(学歴が就いている仕事に求められる学歴よりも高い)状態の把握とそれが生産性に与える影響を計測する。その上で,学歴ミスマッチを解消し,生産性を高める労働政策,人的資源管理,高学歴者のキャリア形成への示唆を探ることを目的としている。平成25年度の研究実績概要は以下の通りである。 1.内部労働市場における教育過剰 研究協力者である松繁寿和氏(大阪大学教授),梅崎修氏(法政大学准教授),井川静恵氏(帝塚山大学准教授)と研究会を開催して準備を行い,調査協力企業において従業員アンケート調査を実施した。過年度の企業調査から得られたデータとあわせて整理を行い,このデータを用いた分析結果を平成26年度に学会で発表するために申込を行った。また,企業調査は平成26年度も実施し,データのパネル化を行う予定である。企業内部における教育過剰の把握は,日本ではほとんど行われていない。諸外国の先行研究では,教育過剰は生産性に「負の影響」を与えることが実証されており,それが日本のデータでも実証されれば,日本企業の再生において人的資源管理の側面から重要な資料となる。その分析のための準備が着実に進んでいる。 2.外部労働市場における教育過剰: 研究代表者の平尾と研究協力者の松繁は,内閣府経済社会総合研究所(ESRI)と協力し,統計法33条に基づき,就業構造基本調査の個票データの申請を行い,データの提供を受けた。日本労働市場における教育過剰を大規模な公的統計を用いて分析した研究はなく,ディスカッション・ペーパーの公表や研究会発表を通じて先駆的な貢献を果たした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究の現在までの達成度については,「おおむね順調に進展している」と判断している。理由は次の通りである。 1.研究計画通り,研究協力者である松繁寿和氏(大阪大学教授),梅崎修氏(法政大学准教授),井川静恵氏(帝塚山大学准教授)と協力し,企業の従業員調査を実施した。平成24年度および平成25年度については調査が終了,平成26年度についても調査対象企業との調整はついており,問題なく実施される予定である。個人を多時点で追えるパネル・データの作成が着実に進んでいる。最終年度の平成26年度中に,より詳細な分析が可能となる予定である。 2.研究開始年度の平成24年度には,論文1編(査読付き)の公表,学会発表2回を行っている。平成25年度は編著書1冊の公表,論文2編(査読付き1,依頼論文1)の公表,学会発表2回を行っており,研究成果の発表も順調に行えている。
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Strategy for Future Research Activity |
1.平成26年度においては,これまでの2年間に実施してきた調査対象企業の従業員調査を継続して実施し,3年3期のパネル・データを完成させる。教育過剰状態は,客観的には,例えば,担当業務の変更,異動,転職などによってその状態が変わる一時的なものである可能性もあり,その生産性への効果を正確に計測しようとすると,同一個人を多時点で補足しているパネル・データによる分析が必要になってくる。調査の実行,データ・セットの作成が終わり次第,分析にはいる。 2.本研究課題と関わる比較研究を進めるため,内閣府経済社会総合研究所(ESRI)および独立行政法人経済産業研究所(RIETI)と協力し,大規模アンケート調査の実施や二次分析,公的統計の個票申請等を通じて,外部労働市場における教育過剰とその生産性への効果についても研究を進める。労働市場全体の問題としての教育過剰と一企業内の人的資源管理の問題としての教育過剰について,その要因や影響力の違いを比較検討していく予定である。なお,特にRIETIについては,平成25~26年度の2年間,教育の生産性を計測する研究プロジェクトへの参加が決定しており,協力体制が築けている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用額が発生した大きな理由は,当初調査票の整理やデータ・セットの作成等の作業で人員を雇用するなどして謝金の支払いを予定していたが,かなりの部分で研究協力者の協力を得ることができ,それらの予算を大幅に使用せずにすんだことによるためである。データについて研究チームで整理することにより,その構造等について理解を深めることも企図している側面もあった。 平成26年度は,平成25年度と同等程度の負担を研究協力者に強いることはできず,その分の予算を人員を雇用するなどして執行する予定である。また,学会発表が研究代表者の所属機関(愛媛)から遠隔地(北海道)で予定されており,一部をその旅費に充てる予定である。
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Research Products
(6 results)