2012 Fiscal Year Research-status Report
サービス部門の外国直接投資の国内雇用及び賃金への影響に関する研究
Project/Area Number |
24730234
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Research Institute of Economy, Trade and Industry |
Principal Investigator |
田中 鮎夢 独立行政法人経済産業研究所, その他部局等, 研究員 (20583967)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 外国直接投資 / 雇用 / 製造業 / 卸売業 / サービス業 |
Research Abstract |
2011年の東日本大震災以降の電力不足や円高等の要因によって、企業の海外進出による日本の産業の空洞化の懸念が強まった。そうした中、企業の海外進出に伴って、国内雇用がどのような影響を受けるのか明らかにしようと試みた。企業の海外進出の国内雇用への影響を探求した研究は、これまで国内外で数多くなされ、基本的には国内雇用を減らす効果がほとんどないことが明らかになっている。本研究の特色は、製造業のみならず、これまで分析されてこなかったサービス部門(卸売業・サービス業)の海外進出も対象とした点にある。 『企業活動基本調査』(経済産業省、2001-2008)からのデータを用いて、2003-2005年に初めて外国直接投資(FDI)を行った日本企業を対象として、傾向スコア法(FDI開始企業とよく似たFDI非開始企業を探し、産業毎、FDI開始年毎、輸出の有無別にマッチング)を用いた分析を行った。主な分析結果は次の3点である。 (1)海外進出が雇用成長率を高める効果は、製造業・卸売業・サービス業すべてにおいて確認された。製造業において、海外進出は、雇用成長率を約12%押し上げる(図参照)。卸売業、サービス業においては、9%程度押し上げる。(2)海外進出に伴って、製造業と卸売業では、輸出が急速に増加する。輸出成長率へのFDIの効果は、120%程度に及ぶ。売上も、製造業とサービス業においては増加する。(3)製造業では、海外進出に伴って、非正規雇用比率が1.6%程度増加する。 以上の成果は、Ayumu Tanaka. (2012) “The Effects of FDI on Domestic Employment and Workforce Composition,” RIETI Discussion Paper, No. 12-E-069にとりまとめた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り、『企業活動基本調査』を用いて、外国直接投資が、製造業及びサービス部門の国内雇用に及ぼす影響に関して、傾向スコア法により分析できたため。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度(2013年度、H25年度)の課題は、各種政府統計の目的外利用申請である。精緻な賃金分析を行うために、「企業・労働者接合データ」を構築する必要がある。そのため、『賃金構造基本統計調査』(厚生労働省)の目的外利用申請作業を行い、必要な労働者の個票データを得る。『企業活動基本調査』の企業レベルデータとの接合には、企業と事業所の対応付けが必要であるため、『事業所・企業統計調査』及びその後継の『経済センサス』(総務省)の利用申請も合わせて行う。これらの申請作業には時間を要するため、なるべく早く申請書類の作成を開始する。そのうえで、得られたデータを用いて、データ構築及び分析を開始する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度(2013年度、H25年度)には、研究遂行のために必要なパソコン関連機器を購入するとともに、最新の研究状況の調査のために、アメリカやヨーロッパの学会への参加を行うことを計画する。
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