2013 Fiscal Year Research-status Report
中国における農村から都市への労働移動が彼らの子供の人的資本形成に与える影響
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24730239
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Research Institution | National Graduate Institute for Policy Studies |
Principal Investigator |
山内 慎子 政策研究大学院大学, 政策研究科, 助教授 (50583374)
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Keywords | 移民 / 子供 / 人的資本 / 中国 / 教育 / 健康 |
Research Abstract |
2013年度には、2012年度に行われていた分析をより前進させた。2012年度には親の都市への出稼ぎが子供の身長や学業成績が芳しくない影響を与えるという結果が得られていたが、これが因果関係を表すものかをより詳しく検証するため、親が16-25歳だった頃に出身村で日照りや干ばつなどの天候被害が多かった地域と少なかった地域を分け、この二地域で親の出稼ぎが増えたか、そして同時に後に生まれる子供の身長の伸び具合や学業成績が低かったかを検証した。天候被害が多いと農村部において農作物の収穫量、ひいては所得が減り、世帯のうちの誰かが都市へ出稼ぎに出る可能性が高まるが、だからといって後に生まれる子供たちの身長や学業まで影響が及ぶことは少ないと考えられる。このため、もし天候被害が多かった地域で親の出稼ぎ期間が長く、かつ子供の身長や学業も他の地域より劣っていれば、これは親の出稼ぎ期間が長かったせいで子供へ負の影響が出たと考える根拠の一つになりうる。2013年度はこの因果関係の立証に成功した。 また、なぜそのような良からぬ影響が出てしまったかを調べるため、学業や身体発達に関係する側面も調べた。その結果、親の出稼ぎ期間が長い子供は学外での勉強時間が少なく、学年に対して年齢が上であることが分かった。家庭で宿題をする躾をしたり、叱咤激励したりする人がいないことで学習に対する努力が助長されなくなっていると考えられる。また学校を始める年齢に違いは見られないことから、親が身近にいないと同じ学年を繰り返すことが多いと考えられる。こうした結果から、親が出稼ぎに行ってしまうことにより子供が家庭で学習する癖を身につけることができず、その結果学業成績が振るわなくなり、学年を繰り返すようになったという負の連鎖がうかがえる。最後に子供を男女で分けた所、これらの負の効果は男子の間で強くみられることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究成果を広く発表しフィードバックを得るため、移民に関するワークショップを開催する予定であった。しかし国際的に著名な中国の専門家を招聘しようとした所日程がうまく合わず、2013年度に持ち越されることになった。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はワークショップで得られたコメントをもとにして論文を改訂し、国際的な査読付き学術雑誌へ投稿する。通常こうした学術雑誌からは半年ほど後に直すべき点がコメントとして送られてくるので、その際には新たなコメントを加味した更なる改訂を行い、掲載を目指す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究結果を広く発表しフィードバックを得るために国際的に著名な学者を招聘しワークショップを行う予定であったが、先方の都合により今年度に開催することが困難になった。 平成2014年5月20日に開催されることになったため、必要経費を2014年度に利用する必要が生じた。
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Research Products
(2 results)