2013 Fiscal Year Research-status Report
銀行間ネットワークが金融制度に与える頑健性と脆弱性に関する理論研究
Project/Area Number |
24730278
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
大橋 賢裕 早稲田大学, 商学学術院, 助手 (10583792)
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Keywords | ゲーム理論 / 取付け / 世代重複モデル / くり返しゲーム / 金融システム |
Research Abstract |
・研究目的:銀行間の資金貸借関係に注目。銀行は資金貸借によって、直面するリスクを軽減していることを、モデルによって理論的に示す。 ・研究結果:銀行は、お互い資金貸借をしあうことでリスクを軽減できるだけでなく、資金貸借をしないときに比べて、預金者たちにとってより望ましい資産配分を達成できる。加えて、市場に長期間存続したいと思う銀行は、そうした貸借関係をお互い自発的に結ぶ誘因がある。 ・背景/内容:銀行は、金融システムにおけるメインプレーヤーである。銀行の行動は、システムの安定性と効率性を左右する。たとえば銀行が取付の発生を許してしまうと、当該銀行の機能停止だけでなく、無関係な銀行まで飛び火し、“システムダウン”を招きかねない。それを回避するために、現在では「預金保険制度」が存在する。本研究は、そうしたシステムダウンリスクに対して、外生的な預金保険ではなく、銀行たちの内生的活動で対応できないかを考えた。結果、市場で長期間活動したいと思う銀行は、システムダウンに対する対抗策として「資金貸借ネットワーク」を結び、自律的にリスクを回避することを示した。 ・意義:先述の預金保険は、金融システムダウンリスクに対する優れた対策である。しかし同時に、預金者や銀行の「モラルハザード」を呼び込み、それが結局はシステムダウンを招くという負の側面があると知られている。一方資金貸借は、モラルハザードのような負の副産物をもたらすことはない。だが資金貸借は、預金保険ほど完全に預金者を保護できない場合がある。とはいえ、預金保険に代わる対策を提示できた事実は、本研究の大きな貢献であると筆者は考えている。 ・その他:本研究を推進するにあたり、関連の深い研究成果を得たので、それをまとめ、学術雑誌として公刊した。(The B.E. Journal of Theoretical Economics誌)
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初予定していた研究成果は得た。 さらに本研究の推進中、ある重要な結果を得た。この結果は本研究でも参照するが、別の論文として公表するのが適切と考え、その成果を別にまとめた。この論文は学術専門誌に公表されることが決まった。 しかしながら本研究に関しては、結果の公表に遅れが出ている。原因は、上述の論文作成および出版までの手間と、途中で本研究におけるモデルを大幅に修正・改善したことによる。 以上より、内容はおおむね順調であるが、論文の公表までを目標としていた事実を鑑みると、やや遅れていると判断するのが妥当である。
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Strategy for Future Research Activity |
成果を論文の形にし、研究会での報告と学術誌への投稿を行う。 その後、研究計画に挙げていた「非対称情報下における銀行の資金貸借ネットワーク形成モデル」の研究に進む。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究成果の公表は、英語論文にて行う。今年度は論文作成が遅れたため、その校正料として割り当てた額が余った。 英文校正料として使用。
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