2013 Fiscal Year Research-status Report
中古車貿易における移民企業家の多民族ネットワーク形成に関する社会学的研究
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24730412
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
福田 友子 千葉大学, 人文社会科学研究科(系), 助教 (40584850)
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Keywords | 社会学 / 移民研究 / 中古車貿易 / 中古部品貿易 / 多民族ネットワーク / パキスタン / ニュージーランド / チリ |
Research Abstract |
2年目(2013年度)は、1年目に実施できなかった海外調査を中心に据えて研究活動を行った。7~8月にはニュージーランドのオークランドで現地調査を実施した。ニュージーランドは、本研究課題における「第三国」に相当するが、イギリス連邦(British Commonwealth)加盟国かつ連邦王国でもあることから、英、米、カナダといった「最終目的国」に近い、もしくはそれらに準ずる拠点として位置づけられていることが明らかになった。またオークランドの中古車貿易市場に参入したパキスタン人移民企業家は、フィージー出身の印僑ムスリムの宗教的基盤を活用してきたことが確認された。さらに両者の集住地域は重なり、ビジネスの集積地域も隣接している。加えて従業員として、現地の事情に精通するサモア人を積極的に雇用する傾向も見られた。一方でかつては市場を席巻したパキスタン人移民企業家が、その後中国系移民企業家に取って代わられ、経済情勢の変化によって市場の勢力図が書き換えられつつあることも確認された。 3月にはチリのサンティアゴとイキケで現地調査を行った。チリもまた本研究課題における「第三国」に相当し、欧米諸国へのステップアップのための拠点として位置づけられていた。中古車業者に注目すると、首都サンティアゴには、パキスタン人業者はほとんどおらず、チリ人の中古車販売業者が点在している。一方でイキケには自由貿易特区(フリーゾーン)があり、その中にパキスタン人中古車貿易業者が多数集積している。これはチリ政府の貿易規制による結果である。またフリーゾーンには、パキスタン人以外にも韓国人やチリ人の集積地域が形成されていた。さらに中古部品はペルー人やボリビア人の企業家が多く、中古衣料はトルコ人企業家が多いなど、同一市場内であっても財によって主要アクターの国籍・民族が異なり、かつ集積地域も緩やかに区分されていた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2年目(2013年度)は、1年目の研究中断期間の遅れを取り戻すべく、積極的に研究活動を行った。特に、ニュージーランドとチリにおける海外現地調査を実施できたことは、本研究課題においてきわめて重要な成果となる。また論文3件、雑誌記事3件、学会報告2件、報告書の編集1件、事典の解説1件と成果物も着実に刊行することができた。 一方で英語論文の作成および英文校閲については、当初の予定よりやや遅れている。その原因は1年目(2012年度)に海外調査を実施できなかったため、論文作成の作業自体が後ろにずれたことにある。しかしながら、英語教員とのブレイン・ストーミングを定期的に行い、3月には経由地のカナダで校閲担当者との打ち合わせも行うなど、作業は着実に進展している。上記を総合的に見て「概ね順調に進展している」と自己評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
3年目(2014年度)は、これまで積み残した課題に改めて取り組み、2年間の研究成果を論文等にまとめて公表する総括の段階である。まず7~8月には「最終目的国」のカナダとアメリカで現地調査を行う。2011年調査で、概要については把握しているため、今年度は郊外(遠方)に点在する中古車・中古部品業者へのヒアリングを試みる予定である。またカナダ・アメリカ滞在中には、英語論文作成・英文校閲作業を平行して進めたいと考えている。また翌2月には「出生国」パキスタンと「第三国」アラブ首長国連邦の現地調査を実施する。これらは過去に現地調査を実施した地域であるため、その追跡調査となる。国内調査が不足している部分については、随時追加する。また2年間の研究成果については、数本の投稿論文としてまとめる。併せて2015年度内の書籍刊行を目指し、共同研究者らと協力して原稿を準備する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
第1の理由として、1年目(2012年度)に、妊娠・出産による研究活動の一時中断のため、研究計画当初に予定していた海外調査を実施できなかったことが挙げられる。産後休暇中および育児休暇中については、予算を使えないことが判明したため、物品購入や謝金支払いを要する調査等の研究活動を断念せざるを得なかった。その時の未使用額が、一部残っている。 第2の理由として、2年目(2013年度)の現地調査で研究協力者が謝金を受け取らなかったため、その未使用額が発生した。また調査地が比較的物価の安い地域であったため、調査コストがかからなかった。 第3の理由として、英語論文作成スケジュールが後ろ倒しとなったため、英文校閲用謝金が未使用額として残ったことが挙げられる。 第1の1年目の未使用額の残額分については、一部を3年目の海外現地調査経費等に充填することを計画している。また書籍や関連資料の追加購入経費にも充てたい。 第2の研究協力者への謝金支払いの未使用額については、英文校閲謝金が当初の予想を上回ることが明らかになってきたため、それに充てることを計画している。 第3の英文校閲用謝金の未使用額については、現在、作業進行中である。作業が完了すれば謝金支払い手続きが行われるため、現段階で、特に計画変更は予定していない。
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Research Products
(11 results)