2014 Fiscal Year Research-status Report
中古車貿易における移民企業家の多民族ネットワーク形成に関する社会学的研究
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24730412
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
福田 友子 千葉大学, 人文社会科学研究科, 助教 (40584850)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 社会学 / 移民研究 / 中古車貿易 / 中古部品貿易 / 多民族ネットワーク / アメリカ / カナダ / イギリス |
Outline of Annual Research Achievements |
3年目(2014年度)も、海外調査を中心に据えて研究活動を行った。7~8月にはアメリカおよびカナダにて、2011年夏調査の追跡調査を行うとともに、新たな調査地点を追加した。アメリカのニューヨーク州では、2011年夏に実施した南アジア系コミュニティ(主にジャクソン・ハイツ地域)のエスニック・ビジネスに関する追跡調査を実施した。また東アジア系コミュニティ(主にフラッシング地域)のエスニック・ビジネス調査を追加し、両者の比較検討を目指した。またロスアンゼルスにて韓国系コミュニティをはじめとする、大規模な東アジア系コミュニティを視察した。 カナダでは、2011年夏に実施したトロント周辺の南アジア系コミュニティに関する調査実績を元に、調査範囲を郊外へと拡大した。ミシサガ地域では、低層住宅中心の南アジア系コミュニティおよびムスリム・コミュニティを視察した。また南アジア系による中古車関連産業のヒアリング調査や地元の自動車解体業者の視察も実施した。パキスタン人企業家は自動車修理業者等の地元住民向けサービス業が中心で、予想通り日本とのつながりはほとんど見られなかった。一方、アフガニスタン人企業家は日本から中古部品輸入業者であり、これまで調査してきた移民ネットワークの一端であることが明らかになった。スカボロー地域では、高層団地中心の南アジア系ムスリム・コミュニティを視察した。幹線道路沿いに大きなモスクがあり、周辺にはムスリム向け商店が集積したショッピングモールが立地する。郊外型にも様々なバリエーションが見られた。 3月にはイギリスのサウザンプトンに立ち寄り、港湾産業や周辺地域のエスニック・ビジネスを視察した。初訪問であったが、観光産業における公的サービスが軒並み有料化され、商業地区は空き店舗が目立ち、都市の衰退が見て取れた。中古車貿易業者も発見したが、数はごく少数であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
3年目(2014年度)は、1年目の研究中断期間の遅れを取り戻すべく、2年目同様、積極的に研究活動を行った。特にアメリカ、カナダ、イギリスにおける海外現地調査を実施できたことは、本研究課題において重要な成果となった。また共著書1件、論文1件、学会報告1件、報告書の編集1件と成果物も着実に刊行することができた。 一方で英語論文の作成および英文校閲については、予定より作業が遅れている。また2~3月にパキスタン調査の実施を予定していたが、近年パキスタン国内の政治情勢が悪化しているため、2014年度中の現地調査実施を断念し、2015年度への延期を決めた。とはいえその時期をイギリス研修およびサウザンプトン調査に振り替えることができたのは幸運であった。上記を総合的に見て「概ね順調に進展している」と自己評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
4年目(2015年度)は、3年間の研究成果の総括を進めるとともに、積み残した課題である「出生国」パキスタンでの現地調査を是非とも実現したいと考えている。できれば7~8月に実施したいが、現地の政情を見て実施の可否を判断する。場合によっては秋もしくは2~3月に延期することもある。また治安回復の兆しが見えない時は、調査地を変更する。候補地として、バングラデシュやシンガポールなどが挙げられる。 本研究課題の調査成果については、書籍(共著書の一部)として刊行する予定である。すでに共同研究者とともに出版準備を進めており、2016年度内の刊行を目指す。そのため2015年夏を目途に、原稿を準備する。併せて作業が遅れている英語論文の作成および英文校閲に集中して取り組みたい。
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Causes of Carryover |
2014年度内にパキスタンで現地調査を実施する予定であったが、2014年6月にはカラチ空港襲撃事件が発生するなど、都市部でも爆破テロが続き、パキスタンおよびその周辺国の情勢も不安定であった。外務省の海外安全情報でもパキスタンは「渡航の是非検討」のレベルのまま、なかなか治安が改善しない。安全面で不安があり、調査を次年度に延期することを決めたため、その為に確保してあった旅費分が次年度使用額として生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2015年度に研究期間を延長し、まずはパキスタン調査実現の可能性を探る。ただしこのまま情勢が好転しないことも十分予想されるため、その場合は調査地を変更して対応する。候補としてバングラデシュ(「十分注意」レベル)やシンガポール(危険情報なし)に変更する、もしくはアラブ首長国連邦(危険情報なし)の調査期間を延ばすことを検討している。
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