2012 Fiscal Year Research-status Report
アートプロジェクトを媒介とした地域社会における交流と社会的活動に関する実証的研究
Project/Area Number |
24730419
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
小泉 元宏 鳥取大学, 地域学部, 講師 (60625234)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | アートプロジェクト / 協働 / 参加 / アート |
Research Abstract |
本研究は、地域社会における交流人口の変化と、地域社会における社会的・文化的活動との関連性を、近年、各地で顕著に増加している「アートプロジェクト」を事例に調査研究することを目的としている。特に、そのことを「アートプロジェクト」に関わる人々である、アーティスト、地域内外から活動に参加するボランティア、地域住民を中心的対象とした社会的関係性の調査から明らかにすることを主眼としている。 このような目的のもと、平成24年度は、地域社会に展開する「アートプロジェクト」に関する文献調査やフィールドワークを中心に調査を遂行してきた。特に、現在のアートプロジェクトが、単なる文化観光を目的としたり、あるいは、展覧会を地域社会に展開したりするのみならず、現代の地域社会が抱える諸課題、たとえば、少子高齢化や都市化に伴う個人の分断化などに焦点化して開催されていることに着目しながら、その意義や課題を明らかにすることを調査課題の主眼とした。具体的には、関連する書籍・論文を通じた文献研究のほか、鳥取県東伯郡湯梨浜町において、古民家を利用してシェアハウスとゲストハウスを伴う文化複合施設を展開しているプロジェクト「うかぶ」、対照的な事例として、東京都千代田区において廃校となった小学校をリノベーションして展開する「Chiyoda3331」などを事例としながら、各プロジェクトのフィールドワークやインタビュー調査を遂行してきた。なお、その研究成果はすでに一部、論文などの執筆を通じて公開している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
上述したように、本研究では、地域社会における交流人口の変化と、地域の社会的活動との関連性を、「アートプロジェクト」を事例に調査研究することを目的としている。とりわけ「アートプロジェクト」に関わる人々であるアーティストやディレクター、地域内外から活動に参加するボランティア、地域住民を中心的研究対象として調査、分析するものである。 これらの目的に対して、本年度の研究は順調に進んできたものと考えている。その主たる要因は、プロジェクトを遂行するコーディネーター、代表、アーティスト、あるいは、活動に関わる人々との信頼関係構築を重視しながら、参与観察を伴ったフィールドワークを進めてきたことで、データ収集に必要な研究環境が整ってきたところによるものである。ゆえに来年度以降の調査の深化に向けて、十分な条件が整いつつあるものと考えている。なお、すでに研究の成果の一部を生かしながら執筆した研究論文(小泉元宏「地域社会に「アートプロジェクト」は必要か? : 接触領域としての地域型アートプロジェクト」『地域学論集』9(2))などにおいて、成果として公開している。 ただし、研究調査の過程において、主たる対象としている鳥取県内アートプロジェクトである鳥取県東伯郡湯梨浜町を舞台とする「うかぶ」の活動展開や、鳥取県倉吉市の「明倫AIR」の活動の変化に伴って、調査手法の妥当性を再検証しながら研究を進める必要がある。この点に関しては、若干計画から調査内容に変更を加えることが必要となる可能性があるものの、本研究にとって重要な部分であるため、慎重に検討を進めつつ、地域社会におけるアートプロジェクトと、それが地域社会に与える影響に関する諸相を明らかにすることを試みたい。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は、次のように年次計画を進めていく。 本年度は、フィールドワークを中心とした調査のなかでも、とりわけインタビュー調査を中心としながら、データ収集を精力的に行うとともに、その分析に注力していくことを最大の目標とする。 まず、夏休みまでに、文化資本、社会関係資本、およびアートプロジェクトに関連する図書・論文を購入し、その文献調査を進めていく。また、並行して、アートプロジェクトのディレクターら、アートプロジェクトに精通する専門家からも聞きとり調査を引き続き行っていく。聞きとり内容についてはテキスト化してデータとするとともに、画像・動画を含めたデータ化を行っていく。 夏から秋にかけては、国内で多数のアートプロジェクトが予定されており、比較対象として、調査対象を絞り込みながら、必要なフィールドワーク、インタビュー調査実施を集中的に実施する。 以上の調査で得たインタビュー等のデータを冬までにまとめ、分析に取りかかることまでを本年度の目標としたい。なお、研究成果は国内外の学会等において、逐次発表し、フィードバックを得ながら進めていく予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度(平成25年度)の研究費使用用途は次のものを予定している。なお、次年度使用額(B-A)である221,443円は、アートプロジェクトに関する調査の都合上、一部の聞き取り調査に関する経費(インタビュー調査、およびアートプロジェクトに精通する専門家からの聞きとり調査、聞き取り内容のテキスト化、データ化に対する謝金等)を研究遂行上、平成25年度に実施すること等によって生じたものである。以下では、それらを合わせた使用計画について述べることとする。 1)文化資本、社会関係資本、およびアートプロジェクトに関連する図書類の購入(設備備品費)。2)アートプロジェクトのディレクターや、アートプロジェクトに精通する専門家からの聞きとり調査(謝金)。3)聞きとり内容のテキスト化、データ化(謝金)。4)画像・動画のデータ化(消耗品費)。5)フィールドワーク、インタビュー調査の実施(国内旅費、謝金)。6)国内外の学会等において、研究の成果発表をするための旅費(国内・国外旅費)の支出に充当する計画である。
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Research Products
(2 results)