2013 Fiscal Year Research-status Report
現代都市下層地域の社会構造再編過程分析のための国際比較研究
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24730423
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
山本 薫子 首都大学東京, 都市環境科学研究科, 准教授 (70335777)
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Keywords | 都市下層地域 / インナーエリア / ホームレス / 横浜 / バンクーバー / 寿町 |
Research Abstract |
バンクーバーでの都市下層地区調査については、2013年度は7~8月、11月に計2回実施した。調査の結果、カナダ国内、とりわけブリティッシュコロンビア州におけるホームレス支援の施策(特に居住支援)が、結果的に同州における最大の都市下層地区である、バンクーバー市のDTES地区での社会福祉住宅の増加と元ホームレスに対する福祉支援の拡大につながっていることを把握した。調査は、DTES地区でホームレス、貧困層の居住支援、生活支援を行う市民団体、NPO、教会、社会企業等に対してヒヤリングの形式で行った。また、2013年7~8月にはバンクーバーだけでなく、カナダ最大の都市、トロントを訪問し、国内最大規模の社会福祉住宅地区リージェントパークでの建て直しの様子を視察し、カナダ国内での都市比較の資料を収集した。11月には、本年度2回目のバンクーバー訪問を行い、地区住民が主体となって行っている文化祭を視察した。また、DTES地区は第二次大戦前までは日系人街であったため、現在、地理学、文化研究等を中心としたカナダ人研究者を中心に再評価の試みがなされているが、そうした研究者らとも意見交換を行った。 横浜・寿町については参与観察調査を中心に年間にわたったデータ収集を行った。具体的な参与観察調査の中身としては、「寿炊き出しの会」および「寿越冬」へのボランティアとしての参加と、「ことぶきゆめ会議」(地区福祉関係者と横浜市行政担当者の懇談会)へのオブザーバー参加等である。これらの年間を通じた調査の結果として、寿町地区が単身の生活保護受給者(とりわけ身体障がいを有している人々)の集住地域としての様相をさらに高めており、そのことを前提とした地域計画が策定されつつあるが、一方でその施策の対象外である人々(若年層や生活保護受給を望まないホームレス層)に対してはより支援の届きにくい状況が生まれていることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2013年度は寿町地区(黄金町地区も含んだ分析)に関しては1回の学会報告と1本の査読つき論文発表を行い、バンクーバーに関しては1回の学会報告と1本の論文発表(査読なし)を行った。これらにおいて、2013年度半ばまでの調査結果の概要をまとめることができた。 バンクーバーについては、DTES地区の主要な団体へのヒヤリングを2013年度内までで済ませることができたため、地域コミュニティや地域活動の概要を把握することができたといえる。さらに、バンクーバーにおけるホームレス、貧困層の居住支援、生活支援について各団体の取り組み概要、政策的背景の両方を抑えることができた。これらは、先進国都市におけるホームレス、貧困層の居住支援、生活支援が政策的に進められていくなかで、都市下層地域が新たにどのような役割を求められ、かつそれが制度化されているか検討する際の重要な資料となりうる。 横浜・寿町についても定期的な社会調査、資料収集を進めることで、地域保健計画を中心とした政策的枠組みの中での当該地域の変化を質的データをもとに把握することができた。2年次までで各地域の概要を把握するためのデータ取得ができ、また比較のための基本的な枠組みの検討もできた。これらを通じ、総じて当初に想定していた研究目的、研究計画の内容をおおむね達成しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
2014年度は最終年度にあたるため、補足的なデータ収集と比較枠組みの精緻化を行ったうえで、分析結果を報告書等にまとめる。現地調査およびデータ収集としては、2014年7月~8月にバンクーバーでの調査を予定している。この調査では、まだ訪問していない市民団体、社会企業等へのヒヤリングとブリティッシュコロンビア州における福祉制度(とりわけ住宅扶助)について資料を収集することを目的として行う。 横浜・寿町地区については2013年度と同様、定期的な地域調査、参与観察調査を行うことで、福祉的居住の進行を中心とした地域構造変化の状況に関するデータを収集する。 年度後半では両都市の比較枠組みについて再検討、精緻化を進め、それにもとづいた分析を進める。分析結果は報告書等にまとめる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初予定よりも海外調査および資料収集が順調に進んだため。 2014年度の海外調査旅費の一部として使用する。
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Research Products
(5 results)