2012 Fiscal Year Research-status Report
津波常襲地における被災経験の受容と克服に関する社会学的研究
Project/Area Number |
24730432
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Tohoku Gakuin University |
Principal Investigator |
植田 今日子 東北学院大学, 教養学部, 准教授 (70582930)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 三陸沿岸域 |
Research Abstract |
気仙沼市唐桑町舞根をメインの調査地として、被災して集落のほとんどが家屋を流失したにもかかわらず、なぜなお海のそばに集団移転を実現しようとし、また集落のメンバー全員が海と集落をへだてる防潮堤の建設に反対の署名をつきつけるのかついて考察をすすめた。調査は今なお他の被災地でも比較検証しながら継続中だが、現時点では以下のような研究成果をまとめた。 調査地は三陸の津波常習地であり繰り返し大津波を被ってきたが、古くから漁業者で生計をたててきたこの地では、津波だけにかぎらず時化による遭難や船舶の事故によって、夥しい数の海の犠牲者を弔ってきた。このような海難史のなかで、とりわけふたつの技法が培われてきた。 ひとつは、突然海に命を奪われた死者やその遺族を弔い慰めるための「海難死を受容する技法」であり、もうひとつは海難事故そのものを半島単位、船単位、ハマ単位あるいは船の規模によってくくられた組合単位で回避し、イソやハマやオキといった多様な性格をあわせもつ海を使い分けながら「海で食っていく技法」である。たとえば津波がハマに到達する前に船を沖に避難させる「沖出し」は、イソとオキとが津波発生時には一方が極めて危険な場所となり、他方が静かな場所となることを利用した船を守る技法のひとつである。また静かな海であるイソにおいて採集漁や養殖を行い、比較的荒い海で遠洋あるいは近海漁業を営むというイエにおける分業もそのひとつである。イエが途絶えないように親子で同じ船に乗ることもまた避けられてきた。 本年度の調査研究によってとくに明らかになったことを簡潔に述べれば、漁師たちが海を一様の性格をもつものとしてではなく、多様な性格をもつものとして平常時にも非常時にも使いこなしていることが明らかとなったことがあげられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
震災をテーマにした研究だったため、現時点での研究成果のアウトプットを公表する機会が多く、その機会に引っぱられるかたちで成果を形にすることができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
ひきつづき三陸の津波常習地(気仙沼市唐桑町)での調査を継続し、論文執筆や学会報告を重ねていく。とくに本年度は、常習地をキーワードとして数十年という人間の生にとっては決して短いとはいえない周期で訪れる津波の経験を、被災地の人びとがどう伝えてきたのかについて注目する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
調査のための旅費、および学会や研究会などの研究成果に対して助言やアイディアを得られる場に赴くための旅費に多くを用いる。また研究に用いる備品や資料、書籍代にも一定程度の研究費を費やす。また、津波の被災によって「災害危険区域指定」をうけ、二度と建築物が建てられなくなった被災集落の過去の地形を図形化するために、外部委託費としても一定程度を支出するつもりである。
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Research Products
(7 results)