2013 Fiscal Year Research-status Report
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24730452
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
崎山 治男 立命館大学, 産業社会学部, 准教授 (20361553)
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Keywords | 心理主義化 / 感情労働 / 純粋な関係 |
Research Abstract |
本年度の研究成果は、現代社会における心理主義化と統治技法の変化に関する理論的研究と、それを後付けする恋愛や社交術に関するマニュアルの言説分析とに二分される。 まず前者については、主にニクラス・ローズやアントニオ・ネグリの理論に依拠しながら現代社会においては私生活から労働の場面に至るまで、一方では高度な感情の管理が要請されながらも、他方では感情のマクドナルド化とでも形容出来る軽視・陳腐化が進んでいることを確認した。 それは、現代社会に生きる人々を高度な感情管理と豊穣な感情経験へと煽るものでありながら、他方で自らの感情が軽んじられていることを感受させる。その中で、人々は前者をえるために絶えず自己の感情経験に対して再帰的になり、それを計算可能な形で保持・表出するように努めるようになる。そのことが、現代社会における高度な感情労働や自己制御を提供することで、社会全体の統治に寄与する一方で、「自己」感情の管理・制御の技術であるため社会のカラクリと気づかせることなく、自己責任の原理へと回収されていくのである。 その動きは、1990年代以降の恋愛・社交マニュアルにも反映される。この間のマニュアルの変遷は、「心構え」から「テクノロジー」へと変容している。すなわち、恋愛や社交についても、抽象的に自らが他者への配慮を考えていることが重視されていたのに対して、次第にTPOに応じた具体的な感情のコントロール、身体の振る舞いが説かれるようになっていく変遷が見られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
理論的視座を確保しつつ、1990年代以降の恋愛マニュアルを分析し、両者の往還作業を進めるという当初計画通りに進展しているため。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、研究計画書に記したように、心理主義化と統治に関する理論研究と恋愛・社交マニュアルの言説分析を行い、本年度内に単著書として纏める。そして可能な限り、それらの社会関係からの撤退の現代的様式である引きこもり者への実証研究に取り組む。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
書籍購入先の業者からの請求と所属機関での精算が平成25年度末になり、その事務処理の都合上、便宜的に平成26年度へと繰り越したため。 次年度使用額が出た理由は、上記であり、平成26年度に入り直ちに書籍代として予算執行されている。他、平成26年度予算のうちの物品費は、研究計画書に記した心理主義化を分析するための理論書や、恋愛・礼儀マニュアル等の書籍購入費である。旅費や謝金は、ひきこもり者を対象とした質的調査の費用として予定している。
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Research Products
(1 results)