2015 Fiscal Year Annual Research Report
ベーシックインカムとフェミニズム:性別役割分業の観点から
Project/Area Number |
24730465
|
Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
堅田 香緒里 法政大学, 社会学部, 講師 (40523999)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | ベーシック・インカム / フェミニズム / 性別役割分業 / ケア提供者手当 / 参加所得 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、近年注目されつつあるベーシック・インカム(以下、BI)をめぐる議論が、従来のフェミニズムの議論と「交差」する点に定位し、第一に、BIをめぐるフェミニズムの二つの異なる主張―女の解放のための「解放料」とみなす主張/女の抑圧のための「口止め料」とみなす主張―を整理し、再検討した。第二に、BIが性別役割分業に与え得る影響について、これに類似した所得保障政策との対比を通して検討した。 BIをめぐるフェミニズムの主張は、これを肯定するにせよ否定するにせよ、その論拠として、BIが家事・ケア労働への報酬となり得る点に言及していた。しかしそれは端的にいって誤解であり、BIは家事・ケア労働への報酬ではない。この点を敷衍するため、BIの類似政策―ケア提供者手当/参加所得―と比較検討した。これらの政策構想は、ケア提供者への経済的補償を通してケア労働に価値付けし、その担い手の大部分である女の地位を高めるとして、一部のフェミニストに支持されてきた。これに対し無条件給付のBIは、ケア労働への報酬ではなく、ケア労働に従事する機会を提供するものだといえよう。しかし、例えばBIによって賃労働から解放される時間が増えた男が、その時間を家事労働に費やすことまでは保証しない。BIは賃労働同様、不払い労働も強制しないため、性別役割分業解消のためにはそれのみでは不十分である。それゆえ多くのフェミニストは、BIは女性を解放する他の政策―ワークシェアや労働市場における男女平等、育児休暇・ケアサービスの充実等―によって補完されねばならないと考えている。 以上、本研究では、①BIをめぐるフェミニズムの主張を再検討し、②類似政策との対比において、BIの家事・ケア労働の評価における含意を明らかにし、性別分業解消のためには、BI単独ではなく他の諸政策による補完が重要であることを示した。
|
Research Products
(1 results)