2012 Fiscal Year Research-status Report
移住者と地元民のソーシャルキャピタルを醸成するコミュニティ要因の検討
Project/Area Number |
24730511
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
加藤 潤三 琉球大学, 法文学部, 准教授 (30388649)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | コミュニティ / ソーシャルキャピタル / 移住者 / 地元民 / 沖縄 |
Research Abstract |
本研究課題の研究目的は、移住者と地元民が地域コミュニティにおいて保持するソーシャルキャピタルを比較検討し、地元民と移住者それぞれのソーシャルキャピタルの形成・発展に影響するコミュニティ要因について検証を行うことである。 本研究の目的を検討するために、平成24年度では主に移住者に焦点を当て、移住者が地域コミュニティ内で保持しているソーシャルキャピタル、具体的には移住者が地元民と築いている人間関係や移住者同士での人間関係などについて検討を行った。本研究では、国内でも移住者が多い沖縄をフィールドに、県外からの移住者に対し、半構造化によるインタビュー調査を実施した。なおインタビューでは、多様な移住者をとらえられるよう、年齢、性別、職業、移住歴などが異なる移住者を選定した。 インタビューの結果、移住者にとって、移住者-地元民間のソーシャルキャピタルと、移住者同士間のソーシャルキャピタルは役割が異なっており、移住先の地域コミュニティへの適応には、移住者-地元民間のソーシャルキャピタルを保持していることが有効であることが示された。ただし、すべて移住者がうまく地元民との間にソーシャルキャピタルを形成できるわけではない。このような移住者にとって、移住者同士でのソーシャルキャピタルは、地域コミュニティに代わる機能的なコミュニティとして活用され、適応を補助することが示された。 平成25年度は、移住者だけでなく、地域コミュニティの受け入れ側である地元民の視点、またさらに質問紙調査による量的な視点も加えながら、上記研究目的の完遂を目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題では、移住者と地元民、双方のソーシャルキャピタルを比較検討することを目的としているが、平成24年度は、主に前者の移住者についての基本的なデータを収集することができた。またこの研究結果に基づき、平成25年度に実施予定である質問紙調査の項目の原案を検討しており、まだ予備調査の段階であるが、データも収集できつつある。分析の結果、項目の妥当性・信頼性が一定以上確保できていることが確認できれば、実査(沖縄県内をモニターとしたWeb調査)に取り掛かる予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度では、移住者だけでなく、本研究課題のもう一方の重要なアクターである地元民を対象とした調査を行う。現在の予定としては、移住者と地元民の両方を対象としたWeb調査の実施を考えている。 その上で研究の方向性としては、移住者・地元民それぞれが地域コミュニティにおいて保持しているソーシャルキャピタルについて、質的・量的に比較検討を行うとともに、両者が地域コミュニティにおいてソーシャルキャピタルを形成・発展させる上で影響を及ぼすコミュニティの種々の要因(例えば、社会構造的要因や社会経済的・生活環境的要因、心理的要因など)について検証を行う。最終的に、地域コミュニティ全体でソーシャルキャピタルを醸成させるための心理学的・社会学的なモデルを提示することを目指す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度の研究費の主な使用としては、調査にかかる費用(物品費)があげられる。なお本研究では、移住者と地元民それぞれからデータを収集する必要がある。ただしランダムサンプリングでは、あらかじめ移住者と地元民を区別して質問紙を配布することが困難なため、調査対象者をある程度スクリーニングできるWeb調査の利用を考えている。データ数として、移住者・地元民それぞれ300~500名程度を想定する。なお、沖縄はモニター数が少ない可能性もあるので、Web調査を複数実施する(沖縄にモニターを持っている複数の調査会社に委託)、有意抽出になるが移住者に個別的に依頼し、スノーボールサンプリングでデータを収集するといった方法も考えられる。その際、調査費用や人件費が多めにかかる。 調査以外の費用としては、学会発表や資料収集のために旅費が必要である。沖縄からの移動の場合、必ず飛行機を利用することになるため、旅費が多めにかかる。
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