2013 Fiscal Year Research-status Report
移住者と地元民のソーシャルキャピタルを醸成するコミュニティ要因の検討
Project/Area Number |
24730511
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
加藤 潤三 琉球大学, 法文学部, 准教授 (30388649)
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Keywords | コミュニティ / ソーシャルキャピタル / 移住者 / 地元民 / 適応 / 沖縄 |
Research Abstract |
本研究の目的は、移住者と地元民が地域コミュニティにおいて保持するソーシャルキャピタルを比較検討し、それらソーシャルキャピタルを形成、発展させていくための要因を検討することである。 平成25年度(および平成24年度)は、主に移住者に着目した調査を実施し、本年度は前年度に実施した県外移住者に対する面接調査の結果を精査し、質的な観点から、地域の集団への参加やネットワークなど、移住者が移住先の地域(沖縄)で形成したソーシャルキャピタルが、移住者の適応に影響を及ぼすことを明らかにした。 また県外移住者412名(男性200名、女性212名)を対象としたWeb調査を実施し、量的な観点から、ソーシャルキャピタルと適応との関連性について検討を行った。その結果、ソーシャルキャピタル要因として、社会参加や一般的信頼、ネットワークの各要因が移住者の適応と関連することが明らかになった。このことから、質と量、双方の観点から移住者の適応に対し、ソーシャルキャピタルが有意な促進要因になることが示された。 なおネットワークに関しては、その相手としてウチナーンチュ(沖縄人)と本土出身者、また強さとして強い紐帯・弱い紐帯の4パターンの組み合わせを設定し、それぞれのネットワークと適応の関連を検討した結果、移住してから間もない段階(2年以内)では、いずれのネットワークも適応に関連しないのに対し、移住後2~10年の一定期間が経った段階ではウチナーンチュ・本土出身者いずれのネットワークも適応に関連していた。さらにそこから時間の経過した移住者(10年以上)では、ウチナーンチュとのネットワークのみが関連するようになった。つまり居住年数によって適応に必要なネットワークは変化することが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究全体の目的を鑑みて、現時点で移住者に対する調査までは実施できているものの、地元民に対する調査が未実施である。つまり本研究における対象のうち、一方ができておらず、達成度としては、「やや遅れている」と言わざるを得ない。 このように研究が「やや遅れている」理由としては、平成25年度の前半に育児休業を取得したことが挙げられる。この育児休業の間、研究費が執行できなかったため研究が停滞してしまった。また育児休業を理由に開講しなかった前期の担当授業を集中講義などで補ったため、研究にかかる時間を削減せざるを得なかった。
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Strategy for Future Research Activity |
育児休業のため研究の計画が遅れてしまった。そのため当初、平成24・25年度の2ヵ年計画であったものを、平成26年度までの3ヵ年計画に延長した。 平成26年度は、現時点で未実施である地元民を対象とした調査を実施することを最優先に研究を実施していく。さらに可能であれば、移住者に対する時系列的な調査も検討する。 以上、移住者および地元民双方の調査を通じ、「移住者と地元民のソーシャルキャピタルの比較検討、およびソーシャルキャピタルの形成・発展に寄与する要因の検討」という本研究の主目的を達成する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
育児休業によって研究が一時的に停滞したため、当初計画で予定していた調査(地元民対象の調査)が実施できなかったため 地元民を対象としたWeb調査を実施する。具体的な調査地点としては、比較対象である移住者データで最も調査対象者が多かった沖縄県那覇市を中心に実施する予定である。 また調査結果を広く公表するため、7月に開催されるICAP(国際応用心理学会)での発表も検討する。
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