2012 Fiscal Year Research-status Report
反事実的思考の発達:出来事の領域と因果的連鎖からのアプローチ
Project/Area Number |
24730550
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
中道 圭人 静岡大学, 教育学部, 講師 (70454303)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 反事実的思考 / 推論 / 幼児 / 認知発達 / 領域特殊 |
Research Abstract |
平成24年度は,物理的変化が生じる因果的な連鎖や心理的変化が生じる因果的な連鎖に関する反事実的推論の発達を検討するための実験を行った。 実験では,幼稚園年長児32名,小学1年生32名を対象とした。各参加児に個別面接で,3種類の反事実的推論課題(2人の人物が登場する出来事を提示した後,その出来事に関する反事実的な質問を尋ねる)を行った。いずれの課題でも,出来事は3つの事象からなる因果的な連鎖(初期事象⇒原因事象⇒結果事象)であり,質問では“主人公や原因事象が異なっていた場合,結果事象がどう変化するか”を尋ねた。具体的に,1つ目はRafetseder et al.(2010)に基づいたもので,ある身体特性(例:背が低く,棚の上部に手が届かない)を持つ主人公がモノを移動させる物語(例:主人公はおやつを取りに行く⇒おやつは一番下の棚にある⇒主人公はおやつを部屋に持っていく)を用いた課題(移動課題)であった。2つ目は,ある心的特性(例:動物園が好き,水族館が嫌い)を持つ主人公の行動に関する物語(例:主人公は外出する⇒動物園は休園で,水族館か遊園地は営業している⇒主人公は遊園地に行く)を用いた課題(行動課題)であった。3つ目は,ある心的特性(例:電車が好き,人形が嫌い)を持つ主人公の感情に関する物語(例:主人公がくじ引きをする⇒人形が当たる⇒主人公は嫌な気持ち)を用いた課題(感情課題)であった。 実験の予備的な分析の結果は,以下の通りである。1.全体的な課題の遂行は年長児(正答率=66%)より1年生(正答率=74%)で良かった。2.いずれの学年でも,各課題の遂行は,移動課題(56%)や行動課題(61%)より感情課題(93%)で良かった。 この結果は,子どもの反事実的推論の遂行が出来事の領域によって異なること,そして領域によっては反事実的推論の発達が児童期以降に生じることを示している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度の実験では,研究計画で想定していたように,出来事の内容領域によって反事実的推論の発達が異なる可能性が支持された。これは,平成25年度以降に「反事実的推論がいつ頃から可能になるのか?」という発達に関する基本的な問いにアプローチしていく上で,因果的な出来事の領域を考慮しなければならないという示唆を与えるものである。この点において,平成24年度の研究はおおむね順調に進展しているといえよう。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度には,以下の2つの実験を予定している。 (1)物理的領域や心理的領域の下位領域を精査し,それぞれの領域に関する反事実的課題を作成し,発達による遂行差を検討する。 (2)平成24年度の実験とは異なる因果的連鎖(例:初期事象⇒原因事象①⇒原因事象②⇒結果事象)に基づいた物語を作成し,その物語に関する反事実質問を尋ね,発達による遂行差を検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度中に購入予定であったいくつかの海外書籍(The Oxford Handbookなど)を入手することができなかったため(公刊日の変更など),当該助成金が生じた。当該助成金はそれらの海外書籍の購入に使用し,翌年度分として請求した助成金は研究実施・研究発表のために使用する予定である。
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