2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24730558
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Research Institution | Nagasaki Junshin Catholic University |
Principal Investigator |
中村 真樹 長崎純心大学, 人文学部, 講師 (80531780)
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Keywords | 自閉症スペクトラム障害 / 自己理解 / 情動機能 / 心理劇 |
Research Abstract |
本研究の目的は、自閉症スペクトラム障害(広汎性発達障害)における「情動機能と自己の発達」について、自閉症スペクトラム障害の児童・青年を対象とした心理劇的支援を通して検討することである。25年度も24年度に引き続き、児童期の自閉症スペクトラム障害における「情動機能と自己の発達」について継続的な心理劇的支援を行いデータを蓄積した。青年期の広汎性発達障害については、集中訓練形式での心理劇的支援を行いデータを収集した。平成25年度の実績は、以下の通りである。 1.自他の情動の理解について 自閉症スペクトラム障害児については、療育キャンプを含む療育活動において事例的視点による分析を行った。平成25年度から、異なる知的発達水準の2グループに対して心理劇を実施した。知的発達水準が高いグループにおいては、特定の情動に関連した日常生活場面を他者と共有し、表現することを通して、情動の理解と表現が促進された。一方、知的発達水準が低いグループにおいては、役割を通した情動の理解について難しさが見られた。以上より、知的発達水準と情動機能の発達の関連に留意し、情動機能の発達を検討する必要が示された。 2.自己の発達について 質問紙(自己理解質問)、投影法(バウムテスト)を実施し、昨年度の結果との比較を行った。その結果、自己理解質問については10歳以降の児童において回答の変化が見られ、「過去の自分との変化」が明確に言語化された。さらに、「分かるけど言いたくない」等自己意識の高まりによる言語化の難しさが観察され、児童期における自己理解の発達的変化が示された。バウムテストについては、知的発達水準とバウムの形状について分析した結果関連がなく、適応水準の観点も含めてバウムテストを分析する必要性が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
児童、青年について、心理劇的支援に関するデータを蓄積することができている。児童については、25年度よりあらたに知的発達水準の異なるグループで心理劇を実施した。このことにより、知的な理解度や日常生活への適応度と情動理解、情動表出の関連について継続的に調査することが可能である。 自己の発達に関しては、児童を対象に24年度に引き続き、2種類のテスト(バウムテスト、自己理解テスト)を実施した。自己の発達に関して複数年度にわたるデータを蓄積することができているため、自己の発達に関する変化を分析することが可能である。
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Strategy for Future Research Activity |
①情動機能の発達について 25年度に引き続き、心理劇的支援のデータを蓄積する。年度末と年度初めにとりまとめる療育計画と支援方針に沿って、年度ごとに記録を整理する。心理劇における対象者の情動表出と情動理解については、個人における変化と支援者の支 援内容との関連という視点で評価する。 ②自己の発達について 25年度に引き続き、投影法、質問紙法という2種類の視点で調査を実施する。調査は、療育計画に組み込む形で行う。25年度の結果との比較という視点で報告書を作成する。自己理解質問については、特に、「自分の好きなところ/嫌いなところ」、「自分のいいところ/悪いところ」等、自己の評価的側面に関する発達的変化について検討する。 ③情動機能と自己の発達の関連について この点については、事例研究を視野に入れ、研究を進める。そのため、保護者面接等情報の収集に必要な手続きを行う。その際、主訴、学校での状況、療育の状況という3つの視点について確認を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
25年度は研究開始後2年目の年であり、外付けHDD等の消耗品について24年度購入分でほぼ賄う事ができたため、物品費の使用を抑えることができた。人件費については、25年度は事例分析を進めながらデータの処理を行ったため、評定作業の時間が予定より少なくなり、使用が抑えられている。 旅費については、国際学会への参加を予定しており、通常の調査旅行も25年度と同様に行う予定であるため、支出に占める割合が高くなる。人件費・謝金については、25年度のデータから随時分析を行い、評定協力を依頼する。物品費については、パソコン周辺機器等の消耗品を購入する予定がある。文献資料検索と取り寄せのため、印刷代、送料を予定している。さらに、研究協力施設との連絡のため、FAXの送受信等の通信料、郵送料を予定している。
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Research Products
(4 results)