2012 Fiscal Year Research-status Report
うつ病の発症脆弱性規定因を検討可能な行動科学的動物モデルの確立
Project/Area Number |
24730636
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Research Institution | Hyogo Medical University |
Principal Investigator |
土江 伸誉 兵庫医科大学, 医学部, 非常勤講師 (00434879)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | うつ病 / 動物モデル / 行動的絶望 / マウス / 発症脆弱性 / 個体差 / 神経細胞新生 / サイトカイン |
Research Abstract |
雄性のC57BL/6Nマウスを被験体とする水迷路学習実験の場面において、プラットホームのサイズとプールの周囲の環境を操作して課題の難度をある一定の水準以上に設定すると、一部の被験体が、プラットホームへの速やかな逃避という適応的対処行動の学習を徐々に放棄し、遂には行動的絶望状態に陥る(欝モデルマウス作製法(特許第4619823号))。我々は、これらの個体をLoser、対して、良好な学習を示す個体をWinnerと命名した。 本研究は、1.Loserを出現させる要因の特定、更に、2.Loserの行動的絶望状態の背景にある生物学的基盤の探索の2点を目的として実施した。 研究目的1については、水迷路学習訓練における強化・非強化(逃避の成否)の履歴を操作した実験を行い、Loser化における学習性の要因について検討した。その結果、逃避失敗の絶対数や水泳の延べ時間はさほど重要ではなく、逃避の成功と失敗とが混在した履歴を経ることが、より重篤なうつ的状態を誘発することが明らかとなった。この事実は、Loserの行動的絶望状態が、水泳処置による無条件的なストレス反応ではないことを示唆している。 研究目的2については、Loserの堅固な行動的絶望状態は海馬における神経細胞新生の抑制にあるという仮説の下に、抗うつ薬の長期継続投与実験を行った。その結果、フルボキサミンの24日間連続投与によりLoserの行動的絶望状態が改善することを確認した。行動面での改善の背景に海馬の神経細胞新生の亢進が伴っているか否かの検証を現在進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
Loserの示す行動的絶望状態は非常に堅固であり、これまでに数種類の抗うつ薬を5~16日間連続で投与する実験を行ったものの、健常性を回復させるには至らなかった。本研究では、より長期の抗うつ薬継続投与により、Loserの行動的絶望状態を改善することを意図していた。が、用いる抗うつ薬の種類、投与量、投与期間は手探りであり、そもそも抗うつ薬によりLoserの行動的絶望状態が改善されるかどうかすら曖昧であった。しかしながら、試行錯誤した結果、比較的簡単に、フルボキサミン(25mg/kg)の24日間連続投与によってLoserの適応的対処行動の学習が再開されることが判明した。適切な実験パラメータの設定を早期に終えられたため、時間的余裕が生まれ、当初計画していた実験を予定通り終了することが出来た。更に、既存のうつ動物モデルとの差異の検討や、マイクロアレイを用いたLoserとWinnerの比較も実施し、研究を進展させることが出来た。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度も、前年度に引き続き、1.Loserを出現させる要因の特定、2.Loserの行動的絶望状態の背景にある生物学的基盤の探索の2点を目標に実験を継続し、データの充実を図る。平成24年度中に、様々な実験条件で出現したLoserとWinner、また抗うつ処置を施した動物の脳や血清を採取、保存している。これらのサンプルを用いて、海馬における神経細胞新生の評価やうつ病のバイオマーカーとしての可能性が示唆されているサイトカイン等の生化学的指標の分析を進める。その際、豊富な知見の蓄積がある既存のうつ動物モデルとの比較も行い、Loserの独自性を明らかにしていく予定である。 行動実験は、兵庫医療大学および株式会社行医研と連携し、磯博行先生(兵庫医療大学共通教育センター教授)、澄田美保、桐山美香両氏(株式会社行医研研究員)らと協力して行う。生化学的指標の定量や脳サンプルの免疫組織化学的評価は、兵庫医科大学において、松山知弘先生(先端医学研究所神経再生研究部門教授)と協力して実施する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度の研究費の使用は、実験動物(C57BL/6Nマウス)の購入、免疫組織化学的評価や生化学的指標の定量のための試薬(特にサイトカイン関連)および関連する消耗品の購入を中心に計画している。また、実験補助アルバイトの雇用や成果発表のための費用に、平成24年度より多くの研究費をあてる予定である。
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Research Products
(6 results)
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[Journal Article] Hepatocyte growth factor overexpression in the nervous system enhances learning and memory performance in mice2012
Author(s)
Kato, T., Funakoshi, H., Kadoyama, K., Noma, S., Kanai, M., Ohya-Shimada, W., Mizuo, S., Doe, N., Taniguchi, T., & Nakamura, T.
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Journal Title
Journal of Neuroscience Research
Volume: 90
Pages: 1743-1755
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] A DKP Cyclo(L-Phe-L-Phe) found in chicken essence is a dual inhibitor of the serotonin transporter and acetylcholinesterase2012
Author(s)
Tsuruoka, N., Beppu, Y., Koda, H., Doe, N., Watanabe, H., Abe, K.
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Journal Title
Plos One
Volume: 7
Pages: 1-10
DOI
Peer Reviewed
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