2013 Fiscal Year Research-status Report
障害者用駐車スペース利用をめぐる市民の行動の適正化を促す啓発のあり方
Project/Area Number |
24730650
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
西館 有沙 富山大学, 人間発達科学部, 准教授 (20447650)
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Keywords | 障害者用駐車スペース / 啓発看板 / 啓発ポスター / 不正利用 / 抑制効果 |
Research Abstract |
今年度(平成25年度)は、障害者用駐車スペースに関する啓発看板を区画後方に設置した場合、啓発ポスターを店内に掲示した場合に、それらが健常者による障害者用駐車スペースの不正利用を抑制しうるかどうかを明らかにするための実験的検証を行った。具体的には、駐車場2か所において啓発看板による抑制効果の有無を、別の駐車場2か所において啓発ポスターによる抑制効果の有無を検証した。手続きは、8月の平日に各駐車場で2日ずつ、障害者用駐車スペースの利用状況を確認するための定点観察調査を実施した。8月末に各調査地において看板の設置、ポスターの掲示を行った。その後、9月の平日に各駐車場で2日ずつ、8月と同様の定点観察調査を実施した。 調査地の選定条件は、平日においても利用客の車両で混雑する小規模スーパーマーケットの駐車場であって、スーパーマーケットのある敷地内に100台以下の駐車場(道路を隔てた第2駐車場等は対象から除外する)であった。 検証の結果、啓発看板についても啓発ポスターについても、不正利用を有意に減少させるには至らなかった。ただし、啓発看板については、調査地のうちの1か所において不正利用数が減少する傾向と、その駐車時間が短くなる傾向が確認された。また、啓発看板については調査地2か所とも、看板を見て駐車を止める車両が目視によって確認された。 これらのことから、啓発看板やポスターによって障害者用駐車スペースの利用を止める者はいるが、その数は少数であること、健常者による不正利用には他の要因が強く影響する場合があり、啓発看板やポスターだけでは十分な抑制効果が表れないことが明らかになった。したがって、啓発の効果を挙げるためには、啓発手法の検討だけでなく、他の要因にどのように対処していくべきかということを、併せて検討しなければならない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究1~4のうち、平成24年度に研究1を済ませ、平成25年度は研究2に着手した。研究2は平成25年度から26年度にかけて行う計画を立てている。研究2の詳細は「看板」「ポスター」「放送」「チラシ」「アンケート」の5つの方法によって、2種の内容による啓発を行った場合の不正利用抑制効果を検証するというものである。平成25年度は、「看板」「ポスター」の2方法について2種の内容による不正利用抑制効果の検証を行った。 以上のように、当初の計画にそって進めることができていることから、研究はおおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度(平成25年度)に行った看板またはポスターによる啓発効果の検証の結果、これらの啓発手法では、有意に不正利用数を減少させるほどの効果を発揮しないことが確認された。これには、健常者が障害者用駐車スペースを不正利用するに至るには複数の要因が存在することが関係していると考えられる。たとえば「他の区画が空いていない」「急いでいる」などの理由がある場合には、看板等の抑制効果は働きにくくなるであろう。また、「自分が駐車しても迷惑をかけることはない」「建物に近く便利な場所に停めたい」という気持ちが強くある場合には、さらに抑制効果は働かない。 以上のことから、平成26年度に「放送」「チラシ」「アンケート」の方法を用いた啓発を行った場合にも、今年度と同様の結果が得られる可能性は高い。この点において、計画の変更の必要性が生じた。また、平成26年度から27年度にかけて、啓発効果の再現性の検証と、啓発内容の周知度を確認する調査実施の計画を立てていたが、すでに最初の啓発において有意な抑制効果を得られないという結論を得ていることから、この部分についても計画を変更する必要がある。 そこで今後は、不正利用の要因を先行研究等から整理し、看板やポスターといった従来の啓発方法と併せてとるべき対策を模索する。また、今後の計画の練り直しを行う。現時点では、啓発手法による効果の違いをみるために、「看板」と「放送」については不正利用時の抵抗感の違いを明らかにする研究を検討中である。また、子どもの頃からの教育が「他の区画が空いていなくても障害者用駐車スペースには停めない」「急いでいても他の区画を探す」という認識を育むかどうかを確認することを考えている。
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